黒沢清『ダゲレオタイプの女』
確かに幽霊譚というかゴースト・ストーリーなのでホラーカテゴリーかもしれんけど、全く怖くない。むしろ幻想小説的な味わい。
面白かったー。
『岸辺の旅』と通底するところのあるストーリー、『岸辺の旅』は確か原作モノやったけど、こちらは黒沢清のオリジナルで、構想もかなり前からあったそうなので、『岸辺の旅』の柳の下の二匹目のドジョウではない。
それにしても耽美な映像が続くことよ。眼福とはこの映画のために用意されていた言葉だ。
『DOOR Ⅲ』や『クリーピー』のゴシック風味のおどろおどろしい部屋とは違って、今作でメインの舞台となる古い屋敷の内装や調度品はとても上品で、ヨーロッパらしさ満開。今作でのパリでの撮影経験が『蛇の道』リメイク版に繋がったんやろうなあ。
森や街の風景も本当に美しくて、黒沢清の美的センスの素晴らしさよ。大きなスクリーンで観たかったなあ。
ちょい長いしいろいろ瑕疵はあるだろうけど、真っ直ぐな(ホンマか?)恋愛ストーリーとしてとても楽しめました。ヒロインの女性もチャーミング、ベッドシーン(ちょっとだけ)はドキドキ。でもベッドシーンはなくても良かったんじゃ笑
あと、ヒロインの階段落ちのシーンは、スタントなしなのかしら?かなりド派手な落ち方してるけど。
『岸辺の旅』も本作も、愛する人を喪うという経験を人はどう受け止めていくのか、愛するということの意味とは、ということを問いかけて、長田弘の「花を持って、会いにゆく」という詩と響き合うよう。
この詩はクリムトの花や植物を描いた絵とコラボした詩画集『詩ふたつ』に収められている。クリムトの描く美しい植物も、映画でヒロインが愛する植物たちと響き合っている。
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