離婚する私に、息子が放った思いがけない言葉
私が離婚を決めたとき、息子は5歳でした。
私にとっては別れたい男性でも、息子にとってはやさしいパパだから。小さいながらにもお別れの時が近づいていることを察している様子でした。
離婚することを伝えてからは、元気がなくなってしまった息子。
離婚の手続き、仕事のこと、引っ越しなど、慌ただしい中でも、一番気がかりな息子の様子に、私はどうしたらいいのかな?と考えました。
そして、じーっと息子の様子を観察するようにしていました。
息子は療育にも通っていて、発達障がいだと診断も受けていたので、当時は言葉がうまく出ないことが多かったのです。
定形発達のお子さんと比べると、会話が成立しにくい、意思の疎通がはかりにくいことが分かっていましたので、
ただただ観察を心がけていました。
すると、
ふっと、何の前触れもなく、あるイメージが舞い降りてきました。
私の心の中で、一つの ”仮定” が浮き彫りになった瞬間でした。
「ねぇ、ママとパパが離婚することになったでしょ。それはね、〇〇くんのせいじゃないんだよ。〇〇くんはとっても良い子で、なんにも悪いことはしてないんだよ。離婚はね、ママとパパの責任で離婚するんだよ。〇〇くんは一つも悪くないしとっても良い子なんだよ」
そんなふうに、しっかりと目を見て、伝えてみました。
息子は(後々分かるのですが)自閉スペクトラム症という障がいのため、視線が合いづらかったのですが、それでもしっかりと息子の目を見て伝えました。
「な〜んだ!僕のせいじゃないんだ〜!ならいいや〜っ」
息子からは、そんな一言が返ってきました。
その瞬間から息子は、いつもの元気な息子に戻ったのです。
あんなにボンヤリして落ち込んでいた彼でしたが、その一言を言い放った後は、軽快な足取りでおもちゃの方にサッサと行って遊んでいました。
私はその場に取り残されました。
あまりの息子の豹変ぶりに驚かされて、そのままボー然となって動けなかったのです。
分かってしまえば、私はとても救われました。
息子としては、「離婚が嫌」「パパといたい」「引っ越し嫌」、そんな気持ちももちろんあったでしょう。
それでも息子は、私のことも、離婚のことも、責めてはなかったんです。
ただただ、「自分のせいで離婚することになったんだ」という考えから、落ち込んで元気をなくしていたようでした。
あの時、息子の気持ちに気が付かないまま、すれ違ってしまえば、
離婚が原因なのかな
パパと離れたくないからかな
引っ越しが嫌だったのかな
そんなふうに、母親の私が勝手に作り出した想像や妄想を息子に当てはめて、離婚にまつわる罪悪感を持つことも出来てしまう‥
それは本当に怖いなと思いました。
離婚は大人の責任で、子どものせいじゃない。
子どもは何一つ悪くない、いい子なんだよ。
そういう当たり前の事実や事情を、あえて言葉にして伝えていく誠実さは、離婚のような苦しい状況の中でも心を解放して救ってくれるんだと、息子の言葉に教えられました。