「銀本」を使うときに、意外と抜けがちな視点(公立中高一貫校 適性検査問題集)
「銀本」という言葉は、おそらく公立中高一貫校対策を行う人たちしか知らない、かなりマニアックな言葉です。この本のことを指しています!(正式名称は『公立中高一貫校 適性検査問題集 全国版』と言うようです)
一般的に過去問が載っている本を「赤本」と呼びますね。あれは一般的には、各学校ごとの過去問が掲載されている本のこと。一方で「銀本」は、全国の公立中高一貫校の過去問が網羅されている本です。全国の過去問が1年分掲載されており、基本的にiBASEの講師たちは発売と同時に購入し、全国分の問題に目を通します。
なぜ「銀本」の対策が必要なのか
公立中高一貫校の適性検査は、かなり独特な出題です。一般的な私学入試と比較しても、一筋縄ではいかない問題ばかり。知識や解法の暗記や詰込みで太刀打ちできる私立入試と比べて、本質的な思考力や表現力を問う、なかなか対策がしづらい問題ぞろいです。
たとえば、東京都立小石川中等教育学校の問題は、こんな感じ。(出題例とその分析・対策を掲載していますので、ぜひ一度チャレンジしてみてください!)
そんな経緯から、実は市販の問題集を見渡しても、質の良い演習課題ってそう多くはありません。よって、全国各地にある公立中高一貫校で出題された適性検査課題を、本番直前期の追い込み時期には解いていくことが、対策としてとても有効です。
解く学校のチョイスがカギ
とはいっても、銀本には相当な量の過去問が掲載されているため、「全部順番に解いていく」のは非効率です。各志望校の傾向に即し、似ている出題がされる学校を重点的に選んで解いていくことが大切です。
iBASEではさらに、「○○中学校の大問2番」のように、出題の中でも大問を絞って解くことを指示したり、「■■中学校の作文課題、200字以内の指示を400字に変えて解いてみて」と条件の変更で志望校の傾向に近づけたりと、かなり細かく使用法を伝えることにしています。
このあたりの問題の選定、正直なところご家庭で一から取り組むのはかなり難しいです。(全国分を網羅的に見るのは本当に大変なので…)多くの塾ではiBASEほど細かく問題の吟味・選定・指示を行っていないようなので、ぜひお悩みの方はご相談いただければと思います。
意外と抜けがちな視点:「難易度順」
さて、そんな風に、銀本から傾向にフィットした学校を選んで取り組んで頂きたいのですが、さらにもう1つポイントがあります。(ここ、意外と意識できている塾の先生や保護者の方が少ない!)
それは(志望校でも、そうでない学校でも)過去問を扱う際は、「とにかく解きやすい簡単な年度から、順番に解かせたい(=難易度順)」ということです。
意識しないままに銀本に取り組むと、傾向が似ている学校の問題を前のページから順に解かせたり、あるいは年度が古いものから順番に解いていったり、そういうやり方を取ることが多いのではないでしょうか。しかし、やはり子どもたちにとって、過去問には難しい問題が多いのが実際のところ。それによってモチベーションが過度に下がってしまったり、落ち込んでしまったりすることがよくあります。
レベルの高い公立中高一貫校の出題ですが、何年も丁寧に古い問題を見ていくと、「この年のこの大問は解きやすい!」という、易化傾向の年度・大問が必ず出てきます。そういう年度の問題をかき集めて、まずは生徒に解いてもらうことにしています。
そうすると生徒は、「え!おれ過去問解けてる!」と、輝いた表情をしてくれます。「そうだよ、君はもう過去問解けるぐらいの実力なんだよ」と伝えると、ますます勉強のエンジンがかかっていくものです。
「実際のレベルを知った方がいい」とか「出来ないことを自覚させた方がいい」とか、上記の指導方針には賛否両論頂くこともありますが…でも、考えてみてください。私たち大人だって、出来ないことに向き合って努力し続けるのは大変だし、なかなかやる気も出ないものです。でもちょっと結果が出だしたり、うまくいき始めたりすると、頑張るやる気が湧いてきたり、いつの間にか没頭したりしているものです。
出来ないこと・苦手なことに向き合い続けるのは、しんどいもの。そんな時、いかにしてスパイラル上に生徒のモチベーションを上げ、肯定感をつかませ、勉強のエンジンをかけていくか。それが指導者としての、腕の見せ所です。受験追い込み期にあたって過去問演習が始まるタイミングで、「銀本」の問題をうまく選択して解く順番を考える。そんな難易度順の「過去問演習カリキュラム作り」は、私たちが最も心血を注ぐプロセスの1つです。
銀本から良問をセレクト!
iBASEではたくさんの問題が並ぶ銀本から、特に学習効果の高い「良問」をセレクトし、解説しています。ぜひこちらのマガジンから覗いてみてください!