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【後編】「ご縁だね」で広がる輪 ワインソムリエの醸す、こだわりの酒。~岡部合名会社 岡部彰博さん~
茨城県は気候も温暖、お米の栽培が盛んな土地です。さらに久慈川水系、那珂川水系、筑波山水系、鬼怒川水系、利根川水系と、豊かな5つの水系にも恵まれています。そのため関東で最も多い36の酒蔵があります。
今回取材させていただいたのは、明治八年創業、常陸太田市にある岡部合名会社さん。日本酒(清酒)、本格焼酎、およびリキュールの製造販売をしています。代表銘柄の『松盛』は、地元だけでなく海外でも飲まれている人気の日本酒です。
毎年春に行われる全国新酒鑑評会では、特に優れた日本酒に送られる金賞を4年連続で受賞歴のある酒蔵です。(4年連続は県内初の快挙!)
また、お客様や酒造りに興味がある方と一緒に『ご縁だね』という自酒(自分たちで作る日本酒)を作るプロジェクトを立ち上げ、お酒造りによって地域の人たちをつなぐ活動も行っています。
創業初の蔵元杜氏として活躍され、「ワインソムリエ」の資格もお持ちという、6代目岡部彰博さんにお話を伺いました。
前編はこちら↓
【後編】日本酒にあう料理は? 地元の仲間たちと作る酒造りへの思いとは?
―日本酒にはどんな料理を合わせたらいいですか?教えてください!
年に数回、県内の酒蔵で働いている年齢が近い仲間5,6人で集まることがあります。居酒屋に集まって、それぞれ自分たちで作ったお酒を持ち込み、料理を注文、話し合いながらどれに合うかお互いペアリング(※)を考えたりします。(※ペアリング・・日本酒と料理の相性のこと)
香りが高いお酒である『松盛』オススメのペアリングは、豚肉料理、特にチャーシューが合う!との意見をもらいました!
『ラヴィアンローズ』という名の日本酒があるのですが、辛口でシャープ味わい、バラの花の香りを感じられるような日本酒に仕上っています。このようなタイプのお酒には、白身魚やてんぷらの料理などがおすすめ。また、さらっとした飲み口で酸もある日本酒『昼下がりのランデヴー』には、牛肉料理がぴったりです!
―『ご縁だね』という日本酒があると聞きました。名前に込められた思いを教えてください。
自分たちのお酒をつくりたい!と市民の方からの声を頂き、「常陸太田地酒プロジェクト」を平成24年に立ちあげました。「ご縁だね」というネーミングはプロジェクトを通して多くの人々とつながりの輪が広がるようにと願いを込めて命名されました。
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たくさんの人の思いが込められている。
参加者と一緒に田植え、稲刈りも自分たちで行い、収穫したお米で日本酒を醸します。一番うれしかったのは、新酒を祝う会でのこと。酒蔵のある敷地内で行われたのですが、自分たちで作った日本酒を飲み、語らいながら、気持ちよく酔ってくれている人たちの姿。その光景を目にしたとき、深い感動に包まれました。杜氏さんの作ってくれたお酒とはまた違う、「地元の水や米で作った日本酒を、自分たちで感謝しながら頂く」ということに価値がある、ということに気づくことができた貴重な体験でした。
―『ご縁だね』を造ることは、テロワールへの思いが強く込められていることが分かりました。最後に今後のお酒造りで目指すこと、思いを聞かせてください。
私たちの業界は冬場など特に大変なことも多いと思いますが、辞めないで続けていてもらうためには、楽しく働いてもらうことが大切だと思っています。朝礼で、「しあわせになろう!」とよく話しています。いろんな幸福のベクトルがあると思うけど「おいしいものを食べたい」とかどんな願いでも仕事を通じで、その思いが叶えばいいなと思っています。
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そのために働いている人の満足度を上げていきたいです。みんなに飲んでもらえるお酒をつくることで新しい設備投資も可能になり、さらに仕事への向上心も上がる。いいお酒を造れば自然によい仲間たちとつながってくる。日本酒を通して、たくさんの前向きな人とつながっていきたいです。 今後は飲食店さんなどとコラボし、日本酒に合う料理のマッチングのイベントなどもやってみたいとのこと。
取材の中で、何度も「自分は運がいい」と話していた岡部さん。
お話を伺ううちに、決して「運」だけではない、岡部さんのまっすぐな人柄や、周りに対する真摯な姿勢が、物事をいい方向に導いているということを感じることができました。
地元である常陸太田市への感謝の気持ち、一緒に働く人や、出会った人たちとの「ご縁」も大切にする。そんな岡部さんの思い、人柄に惚れ込んだ多くの人たちが集まり、いいお酒が造られている。「伝統だけでなく、イノベーションをもって新しいステージへ!」日本、さらには世界へ!岡部さんのテロワールの思いを込めたお酒造りはこれからも続きます。