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ハーブと土が繋いだ新しい人生 ~元シェフが切り開く里美地区の未来~ #1
常陸太田市の北に位置する里美地区。
この自然豊かな地で、都会の喧騒を離れ、新たな人生を歩むことを選んだ一人の元シェフがいます。
かつては、つくば市で創作料理のレストランBarを経営していた
里山のハーブ屋 暦ノ物語代表 で 道の駅さとみ駅長 の 服部 真太朗 さん。
そんな服部さんが、シェフから農家へと転身したきっかけや、里美地区との運命的な出会いについて話を伺いました。
これから、2回に渡ってお伝えします。
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VOL.1 つくばを離れたきっかけは『海が見える場所』に住みたかったから
常陸太田市を南北に縦断する国道349号線沿い、里美地区にたつ「道の駅さとみ」。
かつて、この地域で開催された世界的に有名なアーティスト、クリストとジャンヌ=クロードによる「アンブレラ展」にちなんだ傘をモチーフにした建物と、そこから見えるのどかな里山の風景は、バイクツーリング愛好家にも人気がある。
最近、この「道の駅さとみ」がさらに賑わっていると聞き、その仕掛け人でもある服部 真太朗さんに話を聞きに訪れた。
駅内に入ると物産コーナーには、『里美のマルシェ』というコーナーが新たにできていた。
オーガニック野菜やその野菜を使ったソース、有精卵などが並んでいて、ここに卸している農家さんのメッセージも展示されている。
よく見ると、見慣れた野菜のほかに、手のひらサイズのカボチャや親指の先程のきゅうり、ごつごつした形のトマトなども陳列されていた。豆も種類が豊富で「あんこの味わいチャート」なる甘みや濃厚さを表したグラフも掲示されている。
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建物の雰囲気が明るくなった気がする・・・。
そう思ってみていると、一人の男性が歩み寄ってくれた。服部さんだ。
服部さんは、ロックテイストのTシャツに帽子をかぶり、長髪をなびかせていた。その風貌からは、新進気鋭の有機野菜農家であるとは到底想像できず、里美地区の穏やかな風景にはどこかミスマッチな印象だった。
聞くと、やはりメタルバンドのドラマーとしても20年以上活動中とのこと。
そんな方が里美地区に住んでいるのか!とミーハーな担当は感動を覚えつつ、さっそく服部さんにこれまでの経緯を伺った。
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もともと創作料理のシェフであった服部さんは、レストラン経営と音楽活動を両立させながら、忙しい日々を送っていた。
しかし、生活の変化を求めて茨城県鉾田市に移住する決断を下した。
きっかけは、「海の近くに住みたい」というシンプルな思いだったそう。
鉾田市で服部さんは偶然、あるハーブ農園に出会う。
ハーブが好きだったこともあり、アルバイトとして働き始めると、その魅力にどんどん引き込まれていった。
「純粋に土いじり、自然との関わりが楽しかった」という服部さん。
気づけば、社員以上の働きを見せ、ついには正社員として迎え入れられることとなった。
「夢中になりすぎて、時給制のアルバイトであるにもかかわらず、社員以上の収入を得るほど働いていました。朝から晩までずっと農園にいましたね。」
その後、3年間にわたり農園での経験を通じて、農業の基礎から営業を学び、農園管理や営業業務まで幅広く従事するまでになったのである。