"人が主役" まちづくり ~人がつながると未来へつながる~ vol.1
茨城県の最北西端、北は福島県、西は栃木県にそれぞれ境を接している大子町。面積の約 8 割は山岳地で、四季折々で見事な景観を生み出す男体山や、日本三名瀑のひとつに名を連ねる袋田の滝は、人気の観光スポットとなっています。
しかし、全国的な傾向と同じように大子町も人口減少が進み、高齢者の割合は 49%を超え、県内で最も少子高齢化が進んでいる地域でもあります。
そんな大子町ですが、新たな移住者や U ターンした若者が起業し、中心部の商店街が活気づいていることをご存じでしょうか。
今回は、丘の上のマルシェ主催者で「NPO 法人まちの研究室」副理事である木村勝利氏と、元大子町地域おこし協力隊で卒業後、大子町で「雑貨屋 memeguru」をオープンした飯田萌美氏に、”まちおこし” に関心を持ったきっかけや、今後について話を伺いました。
vol.1 やりたいことの先に「まちおこし」があった ~ 木村氏の場合 ~
常陸大子町駅周辺にある商店街。
”まちうち”と通称されるこの場所は、古くから政治、経済、交通の中心地として発展してきた。町の歴史を調べると、久慈川など水利に恵まれた大子町では、縄文時代から人々の生活が営まれていたらしい。
そして、今や町の古い建物や、歴史・文化を数多く残しているノスタルジックな町並みは「レトロ商店街」と呼ばれ、友人同士や家族で楽しめる多彩なイベントも数多く開催されている。
今回は、その "まちうち” で活躍している方に話を聞くため「daigo front」へ来た。
駅前から歩いて 1 分もかからない場所に建つ「daigo front」。写真館だった建物を改修し、ワークスペースやイベント開催、カフェなどの機能を備えたスペースになっている。
そして、ここが「NPO 法人まちの研究室」の拠点でもある。
1 階は全面がガラス張りで、中の様子がよく見えた。きっと、地元の方や観光客が気兼ねなく入っていけるよう配慮した造りになっているのだろう。
「こんにちは」と明るく挨拶してくれたのは、NPO 法人まちの研究室、略して “まちけん” 副理事の木村さんと、" 雑貨屋 memeguru " 店主の飯田さん。
明るく穏やかな雰囲気の 2 人に、こちらも思わず笑顔になった。
「実は、最初から ”まちおこし” に関心があったわけではなかった。」というお二人。
いやいや、そんな訳はないでしょう・・・。と思わず疑いの目を向けてしまったが、二人ともやりたいことがあり、そこから ”まちおこし” に繋がる活動に広がっていったという。
「私は、最初 ”まちおこし” よりも、マルシェやクラフト市に興味があったんです。」そう語ってくれたのは、木村さん。
約 20 年前、友人のお手伝いで他県のイベントに参加した際、すごく面白くてハマってしまったそうだ。
「その後は『大子町でもマルシェを開催したい!』という一心で、5 年間くらい様々なイベントを渡り歩き、セミナーにも参加しました。
マルシェをやるからには、出店者を集めなければいけない。とにかく繋がりを増やそうと思い、名刺を渡して色んな作家さんと繋がっていきました。イベント自体も、それぞれにやり方が違うし、地域の特色も違う。いろいろ見て学んでいきました。」
あまりにも頻繁に顔を出すため、栃木県の作家さんにご近所さんだと勘違いされていたこともあったという木村さん。
そうやって出店者と繋がりを作っていく中で、 2011 年 第 1 回目の「丘の上のマルシェ」を大子広域公園オートキャンプ場 『グリンヴィラ』で開催した。
「初めてのマルシェは大盛況でした。でも、あまりにも混雑しすぎてしまい、翌年からは大子広域公園で開催しています。出店者も、最初は 50 店舗くらいだったけれど、今は 130~ 140 店が出店してくれています。」
しかし、大盛況のマルシェを開催しても収益は ”ほぼゼロ” とのこと。
なぜそこまで出来るのか?
木村さんに理由を聞いてみた。
「色々なイベントを見て回っていた時、すごく皆がキラキラしていて『町のために』や、『町を元気にするんだ!』というパワーがすごかったんです。
あれを見ると、大子町でもやりたい!と思います。それを、当時周りの親しい友人や知り合いに話したら、「ぜひ、やりましょう!」と言ってもらえました。
本当に今の観光協会長や、地域の皆様には大変お世話になりました。先を走っている先輩方がいたので頑張れました。 ”もしかしたら、自分にも出来るかもしれない” みたいな・・・。」
一度、友人のイベント出店を手伝ったことがきっかけで、イベント運営に興味を持ち、「地域の方がキラキラした姿を大子町で再現したい」との思いから、マルシェ開催やNPO 法人の立ち上げまで繋がった木村さん。
自分の想いを、形にしようという力強さと強い想いを感じさせられた。
次は、飯田さんに ”まちおこし” に関心を持ったきっかけを伺った。