日本教とユダヤ教 山本七平『日本人とユダヤ人』
山本七平の代表作のひとつ。もっとも有名な日本人論でもあります。
オリジナルは1970年にイザヤ・ベンダサンのペンネームで発売されたもの。300万部を超えるベストセラーになり、「この作者の正体はだれなんだ?」と大騒ぎになったそうです。
山本七平はエッセイ風の本を書くひとなのですが、文章は決して読みやすくないと思う。これが300万部も売れる当時の日本人の国語力に驚いてしまいます。
・日本人はなんの苦労もなく育ってきた秀才のお坊ちゃんである。
・日本にとって脅威だったのは自然災害。それには2つの特徴があり、無差別、そして一過性であるということ。これへの対応が台風一過をじっと待つ日本人の忍耐を作り出した。このモードが、戦争の受け止め方にも変に応用されてしまう。
・ユーラシア大陸のほとんどの民族は遊牧民と接してきた。しかし日本人は遊牧民と接触をもたず、牧畜の経験もない珍しい民族である。
・イスラエルはあらゆる気候は混在し、地球のミニ版とでもいえるような地帯になっている。ユダヤ人が世界のいろんな場所に適応できたのはこれが大きい。
・かつての日本は人口の80%以上が農民であり、規則正しく訪れる四季に合わせた「キャンペーン型稲作」をいっせいに営んできた。これが日本人の勤勉さや時間感覚を生み出した。隣に倣えの和の精神もこうして発達する。
キャッチアップ型の近代化や戦後の復興にも、この性格が威力を発揮しました。逆にこのモードと相性最悪なのが1990年代以降の世界といえそう。しかれたレールがなく、目指すべきモデルも見当たらない。こうなると日本人スタイルは弱いです。
・ユダヤ人は律法を重視する。律法の完全厳守が逆に律法の精神を裏切ってしまうこと、それを問題にするのがイエスやパウロの律法批判。そこには日本人の読み込むような「律法vs人間」の構図があるわけではない。
・日本では法外の法が存在し、法よりも、その外部にある阿吽の呼吸が重視される。
・日本人は日本教という宗教の信徒である。その中心には神学ではなく人間学がある。
・無宗教であるならどの宗教にも簡単に染まる。しかし日本はどの宗教も逆におそれのうちに取り込んでアレンジしてしまう。これは日本人が無宗教ではなく日本教のなかで生きている証拠である。
・自らの宗教に無自覚ということは、それが相対化されていないということ、それが純粋に強固であるということ。
「日本教」は山本七平の有名な考え方のひとつ。個人的には、近世以降の日本に限っていえば儒教の影響もかなり強いんじゃないかと思ってます。
・ユダヤ人は他国の貨幣しかもたなかったから、それを純粋に経済学的な対象として扱える。このドライな態度が逆に「ユダヤ人は金に汚い」という印象を生み出した。
・ユダヤ教における神と人の関係は、血縁なき養子縁組である。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?