ADHD/ASD夫@そもそもの話②
そもそもの話。
私は父さんと関わりたくない。
でも、息子が環境を変えたくないと言ったから。
父さんが仕返しに耐えると言ったから。
息子が生活している時間以外は、父は共有スペースに出てこないようにというルールで暮らしている。
息子が成人するまで家庭内別居を続ける覚悟で。
仮定の話で被害者ぶられ、
都合が悪くなるとだんまり。
朱に交われば赤くなる。
腐ったみかんは周りの人間を腐らせる。
人生かけて微塵も関わりたくない人間のひとり。
でもこれは、自分で選択した道。
相手は悪意のない宇宙人。
こちらの話が通じないのは当たり前。
その中で、どう腐らずに、道を整えるか。
山の麓の駐車場へ到着。
まだ不貞腐れている父さん。
息子にニット帽を被せ、ホッカイロと手提げカバンを持たせる。
父さんはリュックと水筒を持っていたので、
「もしかしたら断られるかもしれませんが、ホッカイロ入ります?寒かったので人数分持ってきました」
父さんはハッとした表情。
これまでの父さんなら、よかれと準備したものを『自分にとって必要かどうかで断って何が悪い!』と返事もせずに受け取らなかったけど…
「…昔は断ってたけど、今はしない」
父さんの目には、うっすら涙。
父は宇宙人。
もしくは新人類。
定型発達から新たな進化を遂げたニュータイプ。
その涙も、おそらく反省ではない。
だとしたら、悲劇的な環境で理不尽なイジメに頑張って耐えてる自分が、ちょっと優しくされたときに出ちゃった涙…的なやつかな?
どこまでも自分中心。
でもまぁ、想定内。
その世界線でどう意識を変えるかが問題。
「人数分の中に、あなたも入ってますよ」
そう言ってホッカイロを渡しました。
「あと、お昼は山頂でカップ麺ですよね。ライターや水を用意してくださってましたが、お箸ありますか?」
「ちゃんとある」
「ありがとうございます」
山頂まで登る途中、息子がドングリに夢中になって手提げカバンをロスト。
「あれ?息子のカバンは?」と聞くと
父さんはムスッとして
「俺の担当は(昼食の入った)リュックと、(手元に持ってる)水筒」と。
うーん、勝手にマイルール設定したのね。
笑顔でスルーする。
「あ!カバンここにあったわ〜。よかった」
そのまま山頂まで上がる。
食事の準備を始める父さん。まだ箸の使えない息子にフォークを用意するのを忘れたようで、焦り出す。そしてリュックの中から、入れたはずのないフォークを見つけて驚いた表情。
「あー、昼食は私の担当ではないようですが、こっそり入れておきました。チーム全体でフォローする良さに気づいてもらうためには、困ってから気づいてもらおうと思って黙っていたんですよ」
「あぁ…ありがとう」
散策後、走って下山しようとする息子を追いかける父さん。
岩の横で水筒が置いてあったので、声をかけず運ぶことに。
父子がハイペースだったので、私はゆっくり下山。
しばらく行くと、父さんが息子を連れて慌てて戻ってきた。
「水筒!!」
「ありますよ。私の担当ではないようですが、私はあなたが勝手に決めてる担当とかに拘ってないので一緒に持ってきました」
「あ、ああ。なんか手が軽いなぁと思って。手が、軽かったんだよ。子ども連れながらだったし」
くだらない言い訳。
「今あなたがホッとしたように、私はこういうプレーができる平和的なチームがいいですね」
「…ありがとう」
「お礼が言えるのは成長ですね。昔はやってもらえて当たり前で、感謝や謝罪を口にすることもできない人でしたから」
「…」
帰りの車で間違って冷房を入れた父さん。
手足が冷えて凍えそうだったので、「やばい、なかなか体が温まらない。体調崩したかも」とボヤくと、父さんが冷房だと気づいて暖房に切り替えてくれました。
「ありがとう、マジ神。指先まで凍えてヤバかった」
「いや、たぶん俺が間違えた…ごめん」
「解決してくれたし、体調崩してないって分かったから別にいいよ。気づいてくれてありがとう」
「…感謝…もし自作自演だったらどうする?」
「んー、それは結構本気で来世まで呪われろって思いますね。でも違うでしょ。あなたはそういう憂さ晴らしはしない」
「まぁ、そう。」
「今日1日だけでも、私はあなたを責めずにミスがあればフォローしてきました。定型発達同士なら言葉にせずとも感じられるので、こんな浅ましいこと言うもんじゃないんですけど。あなたの中の私はくっそ最低クズ野郎なようなので、一応言語化しときますね」
無言を貫く父さん。
本当に、価値観の不一致がすぎる。