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ニュータイプ@発達の話14

2度目の主治医との対面。
私が同席することを事前に伝えていたので、前回のように露骨に驚く様子はないものの、私に少し緊張しているのか「あれからどうですか?」とソワソワしながら聞かれ、それに対して曖昧な相槌をうつ父さんのラリーから続く。

「では、先日の検査の結果ですが…

(いよいよ…)

(……)

(…)

『ADHD』と『ASD』の数値が出ました。」

「え、「え?」!」

「え、!」は、自らを定型発達だと信じていた父さんの心からの驚き。

私はADHDが出たことへの驚きでした。

「どちらかというとADHDの方が強く出ています。ASDも基準以上ですので、診断としてお伝えできます。」

ぐるぐるぐる、頭を回転させる。

ADHDの特性は『多動性』『衝動性』。
ばあばのように、話したいことが頭の中でまとまらず会話が飛んだり、相手が話しているのに衝動的に話したいことを話し出したり。部屋の片付けをしようとしてもテレビなど目の前のことに飛びついてしまうので開かずの間が増え、それも「今忙しいから」と言い逃れ「何十年を『今』と解釈してるのか」と毎度つっこまれるのが予想できず辻褄の合わない言い訳を重ねる…その後はイライラを撒き散らし、言葉の揚げ足を取り、その場の勢いでさらに逃げようとする…

…ん?

…辻褄の合わないことだと考えるよりも先に『衝動的』に言い訳をする…その辻褄が合わないことを指摘されると次はまた別の言い訳がポロポロと、口の『多動性』がでている……

……

………

加えてASDの特性である『他人の感情を読みずらい』『ルーティンを崩せない』『強いこだわりがある』と。

あぁ…そっか。そうなんだ…。

目の前のモヤが晴れていくようでした。


「ADHDですと、お薬もありますが、仕事など日常で困っていないのでしたら様子をみて、もし必要だと思われたら服薬するのはいかがですか?」

医師の勧めに父さんは「あぁ…はい…そうですね」と曖昧な返事をする。

「すみません、先生。処方されるとしたらなんという薬ですか?」

「えっと、何種類かありますが、ストラテラがスタートには良いかと」

「ストラテラって効果が出るまでに数週間、ヘタしたら1ヶ月以上かかりますよね?」

「え?あ。あぁ、はい…たし…かに…」

「彼の困り感がないのは、これまで私が彼の腑の煮え繰り返るような言動に耐えてきたからです。そして、私はもう一切我慢する気がありません。防ぎきれない外的要因で彼の心に負荷がかかったら…例えば家族の病気など…きっと彼は多動性衝動性でまた私を傷付けるでしょう。先生は、まだ私に1ヶ月以上も理不尽に耐えろと?」

ADHDは予想外でしたが、神経発達症について勉強しておいたのがこんなところで役立つとは…

「あ、いや…」

「先ほどもお伝えしたとおり、私は今後一切我慢する気がありません。彼に困り感がないのは私が耐えてきたからです。今すぐ離婚をといえば彼に困り感は出ますよ」

黙る2人。

「あ。いや、やっぱり、私が傷つけられたと感じてから服薬をスタートしてもらってもいいです。ただし、効果が出るまで1ヶ月以上、即日家を出てもらいます。もちろん私が傷ついたかどうかの判断は彼ではなくて私の判断です。予防的に服薬をスタートするかは彼の判断で。私はどちらでもいいです。どちらにしてももう我慢する気はないので」

「…」

「くすり…今日から飲みます」

帰りの車で涙を流し「そっか、俺、自分が普通やと思ってた。みんな違うんや。みんなもっとラクに生きてたんやな…」と。

散々指摘していたのに全く響かなかった父さんでしたが、心理検査に書かれた数字にはガツンときた様子。

「その診断がスタートやで。俺は病気だから!と配慮を求めるのではなく、自分がどう社会と折り合いをつけていくのか。自分の特性を知った今、どう動くかを考えないと、あなたの周りから人はどんどん離れますよ」

そうして、父さんの服薬をしながらの同居がスタートしました。

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