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ニュータイプ@関節痛の話④

本当なら翌日、私は久々に地元の友人と会うはずでした。

怒涛の家庭内別居が始まって、ようやく、数少ない心許せる友人に会えるはずだったのに…

熱で抱っことせがむ息子を抱けない親に任せて遊びに行っていいのか…

坐薬も入れず、自分の関節の心配を繰り返す親に任せるなんて…

実は救急外来へ出発する前の父さんにチラリと確認したのですが

「あー、ごめん、いてくれた方がいいかな。俺どうなるか分からんし」と。

当日キャンセルでは申し訳ないので、今日のうちにキャンセルを…と友人に連絡をした。



22時、予定通り帰宅した父さん。

「入院にはならなかったのですね」と話すと

「ウイルス性の関節炎だって!それより受診中にアレストが運び込まれてさ、診てた医師がガタって立ち上がってすごい緊迫してた!自分も行きましょうかって!」

自分の体の心配が晴れたこともあり、衝動性が抑えられず見聞きしたことを喋ってしまうのだろう。

「アレスト…心停止…。そうですよね、そのレベルの人が行く場所ですよね」

多弁な衝動をスッキリさせるまで話を聞いてあげる義理はないので、そこで会話を切り上げました。



翌朝、ムスコの熱は続いているものの昨日よりは少し回復。Switch(ゲーム)がしたいと言うので一階のリビングで過ごしていると、なぜか朝食を終えた父さんもリビングでくつろぎはじめ「そこにお宝があるで!」とアドバイスをはじめる。

「えっと、2階の自室で休んだらどうですか?」

「いや、もううつらないって医者が言ってたから」

「…いや、感染のリスクじゃなくて、私のメンタルの問題です」

がーーーん!とあからさまにショックを受けた顔で2階へ上がって行く父さん。

理由分かってなさそうだなぁと思いLINEを送ることに。

その後、既読無視。

これ以上責めてくれるな、と言うことだろう。


父さんは大きな勘違いをしている。

父さんは、息子と一緒に居たいわけではない。

リビングにしかない、このゲームがしたいのだ。

でも本人は本当にそう思い込んで、今頃YouTubeでも見ながら悲劇のヒロインになりきっているのだろう。

あ、ムスコのゲームもそろそろ切り上げないと。

そうだ!

「そろそろ、ゲーム疲れちゃうから、ムスコの大好きな人形遊びしようか!」


ムスコの人形遊びは特殊だ。

敵やトラブルを嫌うムスコに合わせて、何時間も平和で短調なやりとりをする。2〜3歳のおままごと遊びのような感じ。小学生の息子とアンバランスな内容に大人のメンタルがガリガリ削られるので、父さんも「アレはきつい」と言っていた。

よし。

2階に上がり父さんの部屋のドアをノックする。

「さっきのLINEみてどう思った?」

「…その通りだなって思った」

「そっか…分かってくれたんだね。じゃあ一階に降りておいでよ。ムスコと一緒に遊ぼう!」

父さんは「え?え?」と涙を浮かべる。

イジメ抜かれた不遇なシンデレラの足にガラスの靴がフィットしたような素晴らしい瞬間…


「にんぎょうあそびでね」


そう言うと、父さんは顔面蒼白で固まった。

「よかったねぇ、ムスコと一緒にいられて」

私の顔はきっとアースラのような魔女に見えていたのだろう。

普段数分でもキツいと逃げ出す父さんが、私に見守られ(監視され)何時間も人形遊びに付き合い、ヘトヘトになった頃に

「あなたの望みこれだった?正直に言ってごらん?ゲームしたかったんじゃない?」

「え、あー、ぁあ、あ…そうやわ、そうなんだと思う。人形遊びって言われて『そうきたかー』って思ったもん」と自分の心情を振り返った。

「そうだよね。でも、先に言葉で指摘しても反発されるから体感してもらったの」

「…」

「気づいてないだろうけど、あなたって自分の都合の良い解釈で言葉巧みに周りを思い通りしようとするのがうまいのよ。失敗してもあなた自身も本心に気づいてないから悲劇のヒロインになりきっちゃう。本当に素晴らしい才能」

「…」

「でもね、そういうの私には通用しないから。これからもテメーの利己的な甘い思惑匂わせてきやがったら、徹底的に潰してやるからな」

と伝えました。

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