トランクひとつでも本屋はできる<移動式本屋るーこぼん店主・Rucoさんインタビュー後編>
【後編】生きづらさを乗り越え、移動式本屋さんとして自分の想いにまっすぐに生きる るーこぼん店主Rucoさん
赤いワーゲンバス風に改造した軽ワゴン車で、福岡県久留米市を拠点に町中に現れる移動式本屋・るーこぼん店主・Rucoさん。
本屋さんになる以前は会社で上司とぶつかったり、人間関係で苦しんだり、納得のいかない仕事にモヤモヤしたり…かなりの生きづらさを抱えていました。
そんな日々の中で1冊の本をきっかけに人生が180度変わり、本屋さん開業を目指すことに。
自分らしくまっすぐ生きると決め、歩き始めたRucoさんが進む道とは?
2年間はほぼ収入ゼロ
本屋開業を具体的に模索し始めた時、女性起業家交流会にちょこちょこ顔を出していたんです。そこで「どんな本を置くんですか」って聞かれたので、持ってった方が早いなと思って、赤いスーツケースいっぱいに本を詰めたのが始まりです。スーツケースを選んだ理由はただ「重かったから」ですね(笑)
その時に、トランク一つの本屋さんなんですねって言われて、「あ、それいいですね」って。それからは起業家交流会に行くときに本を紹介したりとか、あとは本を選んでほしいっていう人に、その人に合わせておすすめの本を紹介していました。大きな宣伝はしていなかったので、知り合いの人に頼まれてました。当時はまだ新刊の仕入れができていなかったので、自分が読んだ本を貸す形でした。だから利益はゼロで、本貸して感想を聞いて、お茶おごってもらってほっこりするところで終わってました。
それを2年くらい続けていました。ライターを完全に辞めたわけじゃなかったので、ライターでいただいたお金を全部つぎ込んでいました。
お金的なところで成果も全然出てないけど、その2年間でなんとなくできるなっていうところがつかめたんです。
もちろん「ほとんどボランティアで私何やってるのかな?」って思ったこともありました。でも、そう思い始めたころから、「家で読書会していいよ」とか、「マルシェに出てください」って言ってくださる方が出てきました。さらに、これまでは自分が読んだ古本でやっていたのが、子供の文化普及協会さんから新刊も仕入れられるようになったんです。
いきなり借金、そして夢の移動式本屋
2年間はスーツケースを引っ張りながら、「本屋さんやるならお店かな?車かな?」と思いながら過ごしていて、みんなからはこの人動かないのかよって思われていたと思います。
そんなある日、仲良かった方とのインスタライブで、「この子、来年ワーゲンバス買って移動本屋さん始めるから」って紹介されて、「あ、私来年ワーゲンバス買うんだOK」みたいな。その一言でやるしかないって思ったんです。ちょうど2人目を妊娠中で、大きなおなかで金融機関に行きました。
その年の3月に子供を産んで、6月には融資が下りて、軽ワゴン車を購入。工場にカスタムをお願いして12月に納車。1回目のマルシェがなんとその2週間後。
本棚どうしよう!ってなったんですけど、プロに頼む時間もないし、父が大工さんだけど遠くて呼べない。でも赤ちゃんいるし大変!ってなって、とりあえず子供を抱っこしてホームセンターに行って本棚を組み立てて何とか間に合わせました。
念願のるーこぼんカー
2人目は生まれたばかり。はじめての借金。でもガツガツ動いたっていう感覚は全然なくって、まわりの方に動かしていただいたっていう感覚が強いんですよね。
売っているものが自分が生み出したものだったら、多分自信なくしてたと思うんですよ。
でも、本って他の方が書いてて、素晴らしいからこそ世に出ているわけであって、それが売れないわけがないし悪いわけがないっていうのが自分の中にあったから、自信もって人に勧められた。
最初は選書は「読書のすすめ」さんにお世話になっていたので、その影響が強かったんです。それもあって間違いないと自信を持てたんです。
今お勧めできる本だけでも、うちのクローゼットが満杯になっちゃうくらいはありますね。
気づいたら生まれていた新しい人とのつながり
ワーゲンバスで本屋さんを始めてから、子供がちっちゃかったのもあって、おんぶしながらできる限界でやっていると、やっぱり普通の本屋さんと比べられたときに、どうせ主婦のままごとでしょみたいな感じで言ってくる人も来始めたんですよね。逆にそれが、ここをこうしようとか、もっとこうしようという工夫につながったので、いいスパイスがきき出したなっていう感じでした。
それに本屋さんって全然もうからないんです。うまくいっても微々たるもので。本屋さん始めてから一回も黒字になったことはないんです。でも楽しいからいいかなと思っています。
今のところ仕入れには自信があるので、もうけがなくても本は悪くないと思っているんです。これまでは、子供が小さくてブログが書けないけど、もっと時間できたら、いろいろできることがあるのでは?と思っています。
それに、ここまでくると、応援してくれる人が増えているんです。だからここでやめたら申し訳ないと思っています。出版社や著者とやり取りできる機会も増えている中で、私自身出版社や著者のファンになってしまって頑張ってしまうんです。
私が本を渡したい人たちがいる
まだまだ本がガバッと仕入れて売ることができないから皆さんに申し訳ないなと思いながら毎日過ごしつつ、恩返しできてないからやめられないという気持ちで続けています。
私が本屋さんやめても、何も変わらないかもしれないけど、私から本を渡したい、応援したい人もいるんです。
本にかかわる人々に恩返しをしたいです。本に携わる人々がどれ一つ欠けても本って成り立たないことを身に染みて感じているから、まだ辞めたくないなと思います。
これからやりたいのは、今はコロナで難しいですが、キャンプしながら全国回りたいんです。長野県の栞日さんがやってるアルプスブックキャンプを九州でやるのが夢です。初めて知ったとき、あまりに素敵すぎて栞日さんに思わずメールしてしまいました。福岡で大きい本のイベントはあまりないので、どかんと本が楽しくできるイベントをやりたいと思っています。
本っていろんな可能性があると思っています。いろんなものとコラボできるし無限に幅があると思ってます。
【前編はこちら】
Ruco(るーこ)
鹿児島県生まれ。福岡県久留米市を拠点に、赤いトランク一つの本屋さんを経て、ワーゲンバス仕様の移動式本屋「るーこぼん」を2018年よりスタート。2児の母。栄養士・調理師・製菓衛生師(パティシエ)免許を持つ。
【clubhouse公開取材のお知らせ】
大和書房WEBメディア<I am>では、毎週水曜日にclubhouseにて公開取材を行っています。
本日6月23日に大人気詐欺メイクYoutuberのすうれろさんに公開取材いたします。ぜひ聞きにいらしてください!
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