転向者か、偽装者か――新保守主義者
私はこれまでアメリカの新保守主義者について、共産主義者の亜流であると表現してきました。ここで保守主義について少し見ていきます。
新保守主義の起源
新保守主義、ネオコンサバティブという概念は、アメリカの社会民主主義者マイケル・ハリントン(アイルランド系)によって使用され普及したとされています。
ハリントンは元トロツキストのマックス・シャハトマン(ポーランド系ユダヤ人)と共に社会民主主義者として活動をし、1950年代に社会党系の活動家から、民主党系左派の活動家へと転向していきます。
ハリントンは1970年代に、社会学者のダニエル・ベル(ユダヤ人)、ニクソン大統領の大統領顧問であったダニエル・モイニハン、雑誌編集者のアーヴィング・クリストル(ユダヤ人)などを指して新保守主義者と位置付けました。
元トロツキストとその子孫
雑誌『エンカウンター』の共同創設者であったアーヴィング・クリストルは、1979年の記事の中で、自ら新保守主義者を自称しています。
また1960年から1979年まで雑誌『コメンタリー』の編集者であったノーマン・ポドレツ(ユダヤ人)もまた、1982年の記事の中で新保守主義者であると名乗りました。
特に、アーヴィング・クリストルとノーマン・ポドレツはアメリカ新保守主義の祖として知られており、次代のウィリアム・クリストルもジョン・ポドレツもまた影響力のある新保守主義者として知られています。
今日、当時の新保守主義者と見なされた人々の多くが元々は社会主義あるいはより具体的にトロツキズムの信奉者でした。そのためしばしば彼らに対して転向者あるいは偽装者というレッテルが張られることもあります。
イラク戦争と新保守主義者
日本で特に新保守主義が話題となったのはジョージ・W・ブッシュ政権の頃で、国防副長官を務めたのちの第10代世界銀行総裁ポール・ウォルフォウィッツ(ポーランド系ユダヤ人)、外交問題評議会中東研究上級研究員、国家安全保障補佐官エリオット・エイブラムス(ユダヤ人)、イラク戦争中にサウジアラビアの武器商人アドナン・カショーギと癒着していたとして辞任に追い込まれた国防政策委員会委員長リチャード・パール(ユダヤ人)、イェール大学卒の外交官で、イラク戦争後に連合国暫定当局代表を務めたポール・ブレマーなどがその代表者でした。
2003年3月17日、ブッシュ大統領(当時)は全米向けのテレビに出演し48時間以内にサダム・フセイン大統領のイラク国外への退去を命じる最後通告を突きつけました。イギリスの首相トニー・ブレアはアメリカによる武力行使を全面的に支持しました。
アメリカとイギリスによる開戦理由として大量破壊兵器の保有がありましたが、今日ではイラクが大量破壊兵器を保有していなかったことが明らかになっています。
リチャード・パールは翌年に、デイヴィッド・フラム(カナダ系ユダヤ人)とともに『悪の終焉:対テロ戦争に勝つ方法』を出版し、イスラム圏の対テロ戦争のための政策提言を行っています。また、パールはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフが1期目の首相を務めた際に補佐官を務めていました。
これらの新保守主義者の意向をうけてディック・チェイニー副大統領やドナルド・ラムズフェルド国防長官も積極的に彼らの政策を採用していきました。
米英の著名な新保守主義者
アメリカの新保守主義者にはほかに、オバマ政権時代の国務省ヨーロッパ・ユーラシア局次官でジョン・マケイン、ヒラリー・クリントン、ジョン・ケリーの外交政策顧問を務めたロバート・ケーガン(ユダヤ人)とその妻で2014年のウクライナ危機の時にウクライナの反ロシア派を支援した外交官のヴィクトリア・ヌーランド(ユダヤ人)、ブッシュ政権時代の政策担当国防次官ダグラス・ファイス(ユダヤ人)、ブッシュ政権時代の首席スピーチライターのマイケル・ガーソン(ユダヤ系福音派)、ブッシュ政権時代の国務省参事官エリオット・コーエン(ユダヤ人)、イラクの連合国暫定当局代表ポール・ブレマーの首席報道官を務めたダン・セナー(ユダヤ人)などがいます。
政府関係者以外でも、ナショナル・アフェアーズの創立編集者でジャーナリストのユヴァル・レヴィン(ユダヤ人)、著名なコラムニストでありレーガン・ドクトリンという概念の生みの親で、湾岸戦争とイラク戦争をを提唱し、日本では統一教会の日刊紙『世界日報』のコラムの寄稿者の1人であったチャールズ・クラウトハマー(ユダヤ人)、民主主義防衛財団創立者でジャーナリストのクリフォード・メイ(ユダヤ人)、かつては新保守主義者だった日系人で『歴史の終わり』・『人間の終わり』の著者であるフランシス・フクヤマの名前が挙げられます。
イギリスでは、コラムニストでイラク戦争の際にトニー・ブレアを全面的に支持したデイヴィッド・アーロノヴィッチ(ユダヤ人)、作家のダグラス・マレー(無神論者・LGBT・反イスラム教)などが新保守主義者として知られています。
新保守主義者の特徴
新保守主義者は、ポール・ウォルフォウィッツ(ユダヤ人)が世界銀行総裁を務めていたことからもわかるように、国際的な銀行家勢力と繋がっており、潤沢な資金力があります。
かつてトロツキーがニューヨークの銀行家たちから全面的な支援を受けていたように、そして彼らが元トロツキストであるだけに、新保守主義者もまた、ニューヨークを中心として銀行家の支援を受けています。
また、これまで紹介してきた通り、新保守主義者の主要メンバーの多くがユダヤ人です。初期のアーヴィング・クリストルやノーマン・ポドレツを始めと、政府の主要ポストで中東の政策を決定していた政治家や、ジャーナリストが悉くユダヤ人であるという点を見逃すべきではありません。
この点は共産主義思想の生みの親であるカール・マルクスをはじめ、その後のロシアのボルシェビキ革命家たちがそうであったのと変わりありません。レーニンはユダヤ系であり、トロツキーを始め、カーメネフ、ジノヴィエフ、スヴェルドロフ、ウリツキー、ラデックなど革命の主要メンバーがユダヤ人でした。
しかし、日本の主要メディアも欧米の主要メディアもこの点については全く報道することはありません。それは欧米の主要メディアも日本の主要メディアもユダヤ勢力の影響下にあるからです。
新保守主義者はまた、その活動の場を共和党と民主党に有しています。リベラル政党であるのか、保守政党であるのかは彼らにとっては重要ではありません。かつてはプロレタリア革命を目指していた人間たちがリベラル層と保守層に浸食していると見なすこともできるでしょう。これを転向と読み解くべきか、あるいは偽装と読み解くべきかは、共産主義がどういった思想であるのかを読み解く必要があります。
新保守主義者の多くがシオニストであるという点も考慮しなければなりません。かつてのロシアのマルクス主義革命家がそうであったように、イギリスおよびアメリカの国際的な銀行家勢力がそうであったように新保守主義者もまたシオニストです。
新保守主義者はこの点が旧来の保守派と一線を画します。彼らにとって、アメリカも、愛国主義も、国家主義も重要ではありません。新保守主義者は保守主義や愛国主義の仮面を被ったシオニズムであり、国際主義なのです。
日米関係への影響
新保守主義は、アメリカの反トランプ運動の影響下で、保守派の正統派の地位を確立しようとしています。もはや世間的には新保守主義と呼ぶまでもなく、保守それ自体が新保守主義となってきていると考えることができるでしょう。これまでユダヤ系の新保守主義者がメディアを使って積極的に活動してきたことによってその地位を獲得できたのです。
この影響は日本でも絶大であり、今や日本の保守的な政治家は、好むと好まざるとにかかわらず、米英の新保守主義者と協力関係にあります。
2016年に西田昌司議員が中心となって作られたヘイトスピーチ解消法や、現在、2021年現在、稲田朋美議員が中心となり作られようとしているLGBT法案は、新保守主義、つまりユダヤ改革派の強い影響の下で議論されてきたものです。
今年に入り、アメリカ軍の元高官からアメリカが文化的マルクス主義によって攻撃されているという共同声明が出されましたが、アメリカの民主党にも共和党にも、マルクス主義者が紛れ込んでいるということなのでしょう。彼らの声明を読み解く限りでも、新保守主義というのはマルクス主義者が保守派のなかに紛れ込むために作り出したものと解釈することもできることでしょう。
日本の保守政党である自民党も自称保守を謳っていますが、実際のところはアメリカのマルクス主義者の代理人ではないかと疑いたくなるような言説で溢れています。先の二つの例もその一つです。
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