小銭必携説
私は去年スマホを買い換えたのです。それまでFeliCa対応スマホを使ったこと無かったのが、「これからはSUICAをモバイルSUICAにしてみるか!」「あの小賢しくCMしとるPayPayとやらをやってみるか!」と、電子マネーの便利さを享受するようになったわけです。
ちょっとした買い物ならば財布を持たずに家を出ることに慣れてきた今日このごろ。
とある昼休みに私は郵便物を出さねばならず、切手を買おう!と郵便物とスマホを持ってコンビニに行って「切手ありますかー?」と。
「84円です」と。
スマホを取り出す私に
「切手は現金のみになるんですよー」と。
ガーン。
そ、そうですか…財布は会社に置いてきてしまった。
す、すいません、出直します!とコンビニを後にした。
い、1枚の切手も買えぬとは〜なんたることか〜情けなや〜、とフラフラとした足取りで歩く。
いいや、また往復するの嫌だし、切手は帰りに買おう、なんかガッカリしたから少し散歩して気分転換しよう。そうしよう。
職場から少し歩くと東京国際フォーラムがある。
地下から上がる途中で、ギターの音が聴こえる。
ジプシー・キングスの「Inspiration」だ。
鬼平犯科帳のエンディング的にいうと冬、蕎麦屋の場面のとこだ。地下から地上に出る洞窟みたいな構造になっている箇所なので、音が反響してすごくいい。最初はCDかな、と思ったけど少し聴くと生演奏だな、と分かる(つまりそれくらい上手だった)。私は音のする方向に近付いていった。
そんなところで演奏してたんだ!な所で長身のイケメンのギターインスト。
これは耳にうれしい昼休みになったなぁ〜、と偶然の発見に喜び、彼の周囲を見ると数名の「昼休みの淑女達」が耳を傾けている。
淑女達が入らないように撮影しておりますが。
彼は東京都の公認ヘブンアーティストのダニエル・コフリンさんという方。ふむふむなるほど…と思い近付くと、チラシの置いてある横になにか書いてあるよ。
【よかったら投げ銭をお願いします!】
(あ、あああああああ)
後ずさる私。
この時ほど【投げ銭】という言葉が刺さったことはない。
なぜなら私には投げる銭が無いから。
投げるゼニを持っていないという我が身にうちのめされた。
スマホでも投げ銭出来たらいいのに。
そんな時は「ピッ!」とか「ワオン!」「ペイペイ!」とか鳴っちゃうから厭だよな。うるさいし。そんな愚にもつかないことを考えながら切手の1枚も買えず、イケメンに投げ銭も出来ずトボトボとまた職場に戻ったのです。
曲は「天空の城ラピュタ」のエンディングテーマに変わっていた。寂しい…
小銭必携。