【読書雑記】西脇順三郎『詩学』(筑摩書房、1969年)#ブックカバーチャレンジ_04
数日あきましたが、ブックカバーチャレンジの4日目です。きょうは、シリーズ内に多くの名著を輩出している筑摩叢書の一冊、西脇順三郎『詩学』(筑摩書房、1969年)を取り上げます。
かつて何を思ったか、大学時代に畑違いの文学部に設置されている久保田万太郎資金記念講座「詩学」を履修したことがあります。毎年、詩をテーマに半期ずつ講師をかえて展開する講座で、わたしが履修したのは1992年度。詩人でありながら一大流通グループを築き上げ、先進的な企画や広告を手掛けた辻井喬(堤清二)氏によるものでした(なお、この講義は三田文学での連載を経て『詩が生まれるとき』というタイトルで講談社現代新書の一冊として刊行されています)。辻井先生がこの講座の中で、しばしば言及していた本がこの『詩学』でした。当時は、図書館で半年間延長を重ねて借り続け、辻井先生の講義とあわせて読んでいました。講義を聴き終えた後も、なんとかこの本を手に入れようと神保町の古書店を探し歩いたものです。
で、やっとこの本にたどり着いたのは、大学の助手になった1997年。神保町の田村書店で700円だったと思います。以来、古書店で見つけるたびに買い求め、今では手元に3冊の『詩学』がすぐ手を伸ばせば届くところに置いてあります。
そういえば、この久保田万太郎記念講座の第一回目の講師は西脇順三郎先生でした。この本は当時の講座の記録ではないのですが、直感と感性に彩られた断定的な西脇先生の散文は、それ自体、詩作品といってもよく、われわれ読む者にたいして、想像力の刺激を与え続ける本です。
辻井氏による講義は、想像力の大切さをつとに強調するものでしたが、講義におけるたびたびの『詩学』への言及は、西脇先生に対するオマージュを含んでいたのかもしれません(2020年5月2日記)。