初夏の夕暮れ
日が落ちて、辺りが薄く暮れていく。
昼間は静かだった田んぼから蛙の鳴き声がし始めた。
ぬるい風がゆるく吹いている。
マスクを外すと
ほんのり夏の夜の匂いがした。
いつの間にか季節は春から夏になって
足元に見える草花も変わっている。
歩いていく先に一匹の蛙がいた。
こちらに気づくと、見事な蛙飛びで
いち、に、さん、のリズムを刻み
田んぼに飛び込んだ。
ぽちゃん、と小さな水音がした。
時折通り過ぎる車のライト。
遠くに見える街の明かり。
山の影が濃くなっていく。
思いのほか暗くなってきて家路を急ぐ。
橋を越えようとした時
橋の下で何かが光ったのが見えた。
蛍だった。
ゆっくり光りながら草の間を飛んでいる。
よく見ると他にも数匹
草の間で光っている。
薄暗い中でもわかるほど
青々と茂った背の高い草。
川は見えないけど水の流れる音がする。
後ろを何台かの車が通り過ぎていく。
しばらく見ていた。
そろそろ帰ろうと思った。
歩き出す。
次はいつ見られるかわからないけど
また今度。