うろ覚えむかしばなし 舌切りすずめ
あやふや度 ★☆☆☆☆
むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは良いおじいさん、おばあさんは意地悪なおばあさんでした(※おじいさんが良い人すぎる場合、まれにこのような組み合わせになることがあります)。
ある日おじいさんは、怪我をした雀を拾いました。おじいさんは雀をチュン子と名付けてかわいがり、怪我が治るまで面倒を見ました。
チュン子はおじいさんにとてもなつき、怪我が治ってもおじいさんから離れようとしませんでした。
ところがそんなある日、おばあさんが米を煮て作った糊を、チュン子は誘惑に勝てず全て食べてしまいました。
(※おそらくおばあさんはその糊を着物をパリっとさせたり、障子を張り替えたりするのに使うつもりだったのではないかと思います。この場合、糊の材料に当時高級品だった米を本当に使ったりするのでしょうか。別の穀物だった可能性があります。)
おばあさんは激怒し、チュン子を捕まえて和ばさみで舌を切ってしまいました。
チュン子は泣きながらどこかに飛んで行ってしまいました。
おじいさんはしょんぼりしていましたが、おばあさんはせいせいしたと言いました(※おばあさんの嫉妬だった可能性を感じます)。
そうしたある日、竹藪で仕事をしていると、おじいさんの前にチュン子が現れました。
「チュン子や、生きていたのかい」
おじいさんは喜びました。
チュン子は舌を切られていたため、声を出すことができません。しかし、身振り手振りでおじいさんに付いてくるように伝えました。
おじいさんがチュン子に付いて行くと、大きなお屋敷がありました。
そこでは立派な着物を着た雀たちが出迎えてくれました。
「あなたがお嬢様の恩人ですね。さあさあ、ごちそうを食べて、お酒を飲んでくつろいで行ってください」
おじいさんはチュン子のお酌で酒を飲み、おいしいごちそうを大いに食べました。
しかし夕方になると、おじいさんは家のことが気になってきました。
「そろそろおいとましようと思うよ。チュン子、元気でな」
すると、雀たちは大きなつづらと小さなつづらを出してきました。
「これはお土産です。どちらか好きな方を持って帰ってくださいね」
おじいさんは小さなつづらを選び、持って帰りました。
家に帰るとおばあさんが待っていて、どうしてこんなに遅かったのかとおじいさんを問い詰めました。
おじいさんはすずめの屋敷でおいしいごちそうをいただいたことを正直に話しました。
「そういえばお土産をもらったのだった。さっそく開けてみよう」
つづらを開けると、中には大判小判や宝物がぎっしりと入っていました。
それを見たおばあさんは、目の色を変えました。
翌日、おばあさんは竹藪に出かけ、大声で叫びました。
「チュン子やい!恩人のおばあさんが来たよ!早く迎えに来な!」
チュン子は仕方なさそうに姿を現し、しぶしぶお屋敷におばあさんを案内しました。
お屋敷の雀たちは、微妙な料理でもてなしました。
「おばあさん、そろそろお帰りになってはいかがですか」
「まだ帰らない。お土産をよこすまで帰らない」
おばあさんは粘りました。
雀たちはおじいさんの時と同様、大きなつづらと小さなつづらをおばあさんの前に並べました。
おばあさんは迷わず大きなつづらを選び、持って帰りました。
おばあさんは家に帰り、さっそく大きなつづらを開けました。
するとどうでしょう、中から大小の化け物が飛び出し、おばあさんを攻撃するではありませんか。
おじいさんはなすすべもなく見守りました。
雀たちは、おばあさんの虐待を恨んでいたのです。
その後、おばあさんがどうなったかは分かりませんが、少なくともおじいさんは幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。
昔話の好きな子供でした。でも、あの頃読んだ昔話は今や記憶の中でうろ覚えのあやふやになり、混ざり合いごちゃごちゃになっています。
きちんとした話を目にしてしまう前に、うろ覚えの状態の自分の中の物語を書いておこうと思いました。
きちんとしたものを目にしてしまえば、うろ覚えの状態には戻れないのですから。