うろ覚えむかしばなし こぶとりじいさん

あやふや度 ★★★☆☆

むかしむかし、あるところに良いじいさんと意地悪なじいさんが住んでいました。
ふたりはお隣同士でした。
そして、良いじいさんは右?頬に、悪いじいさんは左?頬に、それぞれこぶ(※良性のもの)がありました。

ある日、良いじいさんが山で仕事をしていると、鬼の宴会に出くわしました。
鬼たちが焚火を囲んで踊っているのを見て、良いじいさんは楽しくなってしまい、飛び入り参加で踊り始めました。
鬼たちは、突如乱入した人間に驚きましたが、楽しく踊る良いじいさんを見てすっかり楽しくなってしまいました。
「おい、おまえ。おまえは実に楽しいやつだ。
 おれたちは明日もここで宴会をしているから、きっとまた踊りに来い。
 来なかったら、このこぶを返してやらないぞ」
鬼たちは、約束のしるしとして良いじいさんのこぶをむしり取り、預かってしまいました。

良いじいさんが家に帰ると、隣の意地悪なじいさんが声をかけてきました。
「じいさん、じいさんのこぶはどこに行ったんだい」
「おやじいさん、こぶがなくなってすっきりしたよ。実は今日、鬼の宴会に行ってきてね、そこで取られてしまったんだよ」
良いじいさんは、鬼の宴会と約束のことを意地悪なじいさんにすっかり話して聞かせました。
意地悪なじいさんは、頬のこぶがなくなった良いじいさんのことがうらやましくて仕方ありませんでした。そこで、翌日、良いじいさんのふりをして、鬼の宴会で踊ることを考えました。

翌日、意地悪なじいさんは、良いじいさんに聞いた通りの場所で鬼が宴会をしているのを見つけました。
鬼はおそろしいが、自分ばかり頬にこぶをつけて生きていくのはつらい。そう思い、意地悪なじいさんは鬼の踊りに飛び込みました。
ところが、意地悪なじいさんは鬼のバイブスに合わせることができません。ぎくしゃく動いて気持ち悪い動きになってしまいました。
「おまえ、昨日のノリはどうしたんだ」
「具合でも悪いのか」
鬼たちは、最初は心配していましたが、だんだんイライラしてきました。
「ワックってレベルじゃねえ」
鬼のうちのひとりが、昨日良いじいさんからむしったこぶを出してきて言いました。
「もうおまえ帰れよ。ほら、コブ返してやるから」
そして、意地悪なじいさんの空いている方の頬にくっつけました。
意地悪なじいさんは、両頬にこぶを抱え、泣きながら帰りました。

「昨日までは最高にイカした野郎だったのに、ブラザー、あいつは変わっちまった。変わっちまったんだ、ブラザー」
鬼は少し寂しそうでした。


昔話の好きな子供でした。でも、あの頃読んだ昔話は今や記憶の中でうろ覚えのあやふやになり、混ざり合いごちゃごちゃになっています。
きちんとした話を目にしてしまう前に、うろ覚えの状態の自分の中の物語を書いておこうと思いました。
きちんとしたものを目にしてしまえば、うろ覚えの状態には戻れないのですから。

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