
冷血は先を行く
ペリー・スミスとリチャード・ヒコックという2人の前科者が見ず知らずの一家4人を皆殺しにした事件。
理由なき殺人も凄惨極まりない殺人も珍しくなくなった現在、そういう残酷描写ばかりだとしたら、どれほどのものかと思って観た。
映像、構成、演技、どれも完璧ではないか。
家に押し入り殺人に至るまでの回想シーンは凄い。
ファーストシーンもラストシーンもいい。
ロードムービーのような優しい感触と胸苦しい悪夢の中にいるような悪寒の同居。
そして全体から感じるのは、将来の事態の悪化を予見して、既に消耗しきったかのようなテンション。
事務処理をこなすかのような手際。
希望と絶望、愛と憎しみ。
移動しているのにどこにも行けない気がする閉塞感と、時は過ぎても過去も未来も空っぽの毎日。
殺人行為の冷血だけを訴えたい作品ではないだろう。
ペリーとディックの絞首刑による死の様子を描くのは、戒めというより彼らに対する冷血なものの存在を確信するからだろう。
冷血/リチャード・ブルックス
In Cold Blood
1967
Director : Richard Brooks
Writers : Truman Capote, Richard Brooks