[書評] ナナメの夕暮れ
はじめに
なぜこの本を手にしようと思ったのかは忘れてしまったが、どこかで知って「読んでみたい」と思い、気づいたら自宅に届いていた。読んでみたら面白くて一気読みしてしまった。以下メモ。
書評
「人見知り芸人」と言われる著者が、世間で起きていること、世間と自分との関係、世間に対する自分の中で起きる反応への考察などを綴っている。内向的であることは間違いないが、卑屈というわけではなく、むしろ素直な人間性を感じさせる筆致だった。他人に対する否定的な考えがブーメランとなり自分の思考や行動を制限する、といった指摘が本当にグサリときた。
引用&コメント
これな。正解なんてない物事でも、最適解っぽい意見が簡単に入手できることを頭が覚えてしまっているので、ついググったりTwitterを見たりして「そうそうコレコレ」みたいな当てはまりのいい情報を探してしまう。これをやりすぎると、他人との生の会話で自分の意見を言うのを逡巡したり、そもそも自力で意見が生成できなくて黙ってしまう。思考のアウトソーシングを続けた末路。
実際は問題視している人はそれほどいないのに、話題になりそうなこと、話題にしたいことを恣意的に人々の中に放り投げて、煽り立てているのではないか、という指摘。ゴムのヘビのおもちゃを教室に投げ込んでパニックを起こすようなものと例えているが、言い得て妙。
宇宙飛行士の野口聡一とのやり取りから著者が感じ取った野口さんの強さの根源。自分も「内発的な安心感」って持ってないなぁと認識させられた。
台湾旅行に行ったときにお寺でお祈りをする多くの現地の人を見て、信仰する先が存在することにうらやましさを感じたのを思い出した。じゃあ自分も何かの宗教を信仰すればいいじゃないかという話なのだが、いまさら純粋に何かを信仰することなんでできないと思う。信仰するために信仰するというか。で、著者の指摘は鋭いと思った。神様に相談したり告白したり懺悔したりできない無信仰の人間は、ひたすらそれらを自己消化しないといけないがそんなことはやりきれないんじゃないか。著者も書いているが”耳が痛いことを言ってくれる信頼できる人”が必要だね。自分にはいない。
シンプルな文章なんだけど、自分なりに考えた人の表現だなと感じた。
自分が守っている自意識って何なのだろうと考えさせられた。きっと変なプライドなんだろうけどそれって何のプライド?自分の想像している外から見た自分の姿ってそんなにいいものなのか?
長い引用になったが、本書で一番効いた部分がここだった。他人のことを否定的に見ているという自覚はあまりなかったけれど、つい皮肉を言いたくなる癖があり、皮肉を言うために無意識にあら探しをしていることがあるなと気づいた。今日から直していきたい。
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