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虫の音と日本特殊論
日本人は虫の音を綺麗と感じるが、西洋人は雑音にしか聞こえない――。
以前こんな話を、まことしやかに話す人がいた。
どうやら角田忠信『日本人の脳』(1978)という本に端を発しているらしい。
無印良品のサイトでも、この説が紹介されている。
https://www.muji.net/lab/living/150909.html
[…]脳の働きを日本人と西欧人で比較してみると、西欧人は虫の音を右脳(音楽脳)で処理するのに対し、日本人は左脳(言語脳)で受けとめる、つまり虫の「声」として聞いていることが角田博士の研究で明らかになりました。
これが同説の根拠のようだ。
しかし、「西欧人」が虫の音を「音楽脳」で処理しているならば、虫の音を音楽的に楽しんでもよさそうなものである。
多くの日本特殊論と同様、信憑性が不十分だ。
実際、たしかワーズワースの詩で、虫の音を愛でている箇所を読んだことがある。
また、ビートルズの「Sun King」は、鈴虫らしき音から始まる。
あるいは、同曲はジョン・レノンの作品なので、オノ・ヨーコの日本人的感受性がジョンに伝播したと解釈すべきなのだろうか?