寺山修司という人
寺山修司は、過激な無法者といったイメージが強いらしい。それも事実なのだろうが、私にとっては哀愁漂う人情派という印象だ。少なくとも作品に触れた感じでは、そうである。
映画の『書を捨てよ町へ出よう』は、たしかに過激なシーンが多い。性的タブーへの挑戦の数々は、同時に社会への挑戦とも言えよう。それでも私が心に残ったのは、主人公やそのお婆さんの惨めな境遇であり、主人公が妹を慰める場面だ。とくに後者では、ほっこりした空気さえ流れている。
短歌に目を向ければ、哀愁や人情が伝わってくる歌が沢山ある。
売りにゆく柱時計がふいに鳴る横抱きにして枯野ゆくとき
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや
逆に考えると、青森の文学少年だった彼が、その後なぜ過激化したのか気になるところだ。