「みにくいアヒルの子」の正体
『Nizi Project』でもお馴染みのアンデルセン童話『みにくいアヒルの子』だが、本作品の血統主義的モチーフには以前から疑問を感じていた。
あくまで寓話とはいえ、アヒルより白鳥のが美しく価値があるかのようなメッセージは、21世紀には封印されるべきではないか。
ついでに言うとNHKの『ファミリーヒストリー』も、芸能人の由緒正しい家柄を証明する'血統書作成ドキュメンタリー'である。
閑話休題、『みにくい…』から現代にも通用するメッセージを汲み取るとするなら、どういったものが考えられるだろうか?
それは、やはりタイトルの「みにくいアヒルの子」の指示対象を「白鳥の子」と捉えず、「白鳥の子」を虐げた「アヒルの子たち」と解釈するより他にない。
となると、「みにくい」とは見た目の「醜さ」ではなく、心の「醜さ」を指す。
こうして、見た目の違いに基づく排斥を断じるメッセージが強調され、21世紀そして令和に相応しい作品に昇華するだろう。
実は白鳥だったという結末からは、見た目にコンプレックスを抱いていたとされる作者自身の変身願望と悲哀を読み取ることにしよう。