デザイナー組織のビジョンとバリューを言語化するプロセスの話
こんにちは!i3DESIGNの木下です。
いきなりですが、みなさんの所属している組織にはMission、Vision、Value(以下、MVV)はあるでしょうか?全社のMVVは多くの企業が用意しているものの、部署単位となるとどうでしょう?
MVVは、会社や組織が自分たちの存在意義を明確にするために必要とされているもので、これから先、より良い組織の形成を目指すために用いられます。MVVを決めることで社外に向けて自社の提供価値を発信できるだけでなく、集団として向かうべき方向性が定まり、社内のメンバーとの共通認識を持つことができるでしょう。
また、MVVの言語化はチームビルディングの取り組みの1つとして有効です。
組織の発展状態を5段階に分類した『タックマンの5段階モデル』では、形成期・混乱期・統一期・機能期・散会期のうち、4段階目にあたる機能期=「自分の役割を理解し、お互いの個性を認め合いながら成果を出すことができる状態」を目指すために非常に有効な取り組みです。
今回の記事は、「これからより良い組織を作るためにMVVを決めたい!」「組織の方向性をハッキリさせたい!」と考えている方へ、私たちが実践したビジョン・バリュー策定プロセスをご紹介します。
前提
まずMVVを決める前に確認するべきことがあります。それは、今の組織に必要なものはMVVのうちどれか?ということです。3つ全てが必要か?ビジョンとバリューの2つが必要か?は今の組織の状況によって異なります。そこで、まずはMVVの意味やそれぞれの違いを理解し、検討に至る背景と目的を確認しましょう。
私たちの場合、ビジョンとバリューの2つを決めました。
初めはデザイナー組織が大きくなっていく上で組織としての行動や価値基準を明確にしたいという目的でバリューを作る予定でした。
しかし、ミッション、ビジョン、バリューは言葉づくりが重要であり、行動や価値基準=バリューを決めるためには現状の組織の課題や特徴などを理解する必要があることや、将来のなりたい姿・未来像=ビジョンが必要な行動の元になることが分かりました。そこで今回はバリューだけではなくビジョンも決めることにしました。
全体の流れ
全体の流れとしては4つのステップに分かれます。
ステップ1はビジョン、次のステップ3はバリューを決めるための工程になっており、最後のステップ4はそれぞれの言語化の工程です。今回のプロセスの特徴として、ビジョンとバリューを完全なトップダウンで決めるのではなく、ワークショップを開きメンバーを巻き込んだプロセスを設計しました。メンバー全員参加型にすることで、上位層と現場のギャップ発生を防ぐことができます。そして、メンバーが関わることでビジョンとバリューが決定した後も全員が自分ごととして捉えることができると考えています。
STEP1:ワークショップ -組織の今と未来を可視化する-
ステップ1として、組織の現状把握と未来を想像するためのワークショップを開催しました。
まずマネージャーから企業理念やこれからの取り組みなど今後目指していく姿を話し、メンバーのマインドセットを行いました。
次に、組織の現状を理解するためのワークとして「今、どんな組織?」というテーマで各人が思うGOODな点とBADな点を書き出しました。その後チームに分かれ、一人ひとり書き出した内容を模造紙に貼りながら発表していきます。同じ組織でも普段の交流が少ないメンバーや役割が異なるメンバーと共有することで新しい視点を得ることができ、今までより広い範囲で組織を捉えることができました。
次は3年後の未来像を想像するために「これから、どんな組織になりたい?」というテーマでワークを行いました。各人が描く組織の状態を想像し書き出した後再びチームに共有します。書き出す際は同じ粒度の言葉でアイデアを出してもらうために、具体的な記入例を提示したり、「〇〇な組織」と語尾を指定したりと対話の際に深堀りしやすい内容を書き出してもらうよう工夫しました。
実際には「〇〇な組織って格好いいね!」「〇〇な組織って具体的にどんなことをするの?」と会話が広がり、未来像を細かく理解できたと思います。
その後、KJ法を使ってグループ化するワークを行い、相対性や類似性など抽象化された要素の繋がりを可視化しました。最後に全体発表で各チームが想像する未来像を共有しました。
STEP2:まとめ -ワークショップの結果をグループ化する-
ステップ2は、1回目のワークショップで明らかになった各チームの結果を1つにまとめていく作業になります。まとめる方法としてKJ法を使い、全体を俯瞰しながら関連する内容をグループ化し、キーワードをつけていきました。
そのまま抽象度を上げるのではなく、チームごとでまとめ方が異なるため、1つひとつの内容を熟読し文脈を理解しながら再びグループ化を行います。また、他のグループの中に関連した内容があれば加えていきました。1枚にまとめた後はグループ同士の関係性を見て構造化し、全体の傾向を明らかにしました。
STEP3:ワークショップ -グループのキーワードをもとに行動を書き出す-
次のステップ3では、2回目のワークショップでまとめたグループのキーワードをもとに具体的な行動や価値基準を考えるワークショップを行いました。
まずは個人ワークで1つのキーワードに対し、明日から取り組めるレベルの行動や価値基準を書き出していきます。1回目のワークショップと同様、同じ粒度の言葉でアイデアを出してもらうため問いかけの設定をしました。例えば、「どのような習慣を持つべきですか?」や「業務を行う中で絶対してはいけない考え方は何ですか?」など問いをなるべく数多く広く、書き出す時の手がかりを作りました。
続いて、書き出した内容をチームに共有し、グループ化を行います。各チームグループ化が終わった後、全体から特に共感できるものにシールを貼りました。これがビジョン、バリューの言葉を決めるための素材として用いられます。
STEP4:言葉の選定 -グループ化した結果から適切な言葉を選ぶ-
最後にプロジェクトメンバーで他社の事例を参考にバリューの数を決め、ワークショップで出た素材を大きく分類していきました。組織として3年後には達成していたいもの、社外に伝えたいものなどバリューの偏りを無くすために必要になります。
そして分類された各項目の軸を決めるために「1番伝えたいことは何か?」を考え言葉を出していきます。分類することで漏れてしまう内容や似ている言葉を並べることで軸がぶれてしまう可能性があるため、言葉を出し合った後、特に伝えたい内容を話し合いビジョンとバリューの骨組みを作りました。
最終的に、将来のなりたい姿・未来像=ビジョンと行動や価値基準=バリューの軸が明確になったところで双方の整合性を確認して完成しました。
まとめ
今回の記事のポイントは4つになります。
前提として、MVVのどれが今の組織に必要なのかを決める。
ビジョンを決めるためには、初めに未来像を考えるのではなく、チームの現状を理解することから始める。
今後、ビジョン、バリューを自分ごと化するためにはワークショップを開催し、できる限り現場のメンバーを巻き込む。
言葉を選定するときは、ビジョンとバリューの整合性を確認する。
いかがでしょうか?
今回のプロセスを用いて組織の現状を見直し、MVVを決めていくためのご参考になればと思います。
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