「祭」
はぐれないように とつないだ
手と手の間ににじむ汗
いつかこのきもちが
何処かへ行ってしまわぬよう、
君が何処かで一人にならないよう、
そんなことを想いながら
今年も
「いつもの夏祭り」を過ごした。
りんごあめ、
ヨーヨー、
金魚すくい、
輪投げ、
じゃがバター、
射的、
くじ、
チョコバナナ、
焼きそば、
それから、
それから、
君の笑顔。
◇◇◇
大きな火の花を前にはしゃぐ君の横顔を
眺めているうちに汗の感覚がなくなって
つんと鼻の奥が鳴って
火の花が咲く音に砂利が交じって
前髪の生え際に浮かんだ汗を拭って
君の浴衣の裾を少し引っ張って
君の耳の奥に言葉が生った
瞼の上が痛いくらいに震えて
二人の影が二人の言葉の亡霊になって
はぐれた夏を握って指をほどく。
【記憶の中の夏】――――「祭」