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都知事選に出た安野さんの『サーキット・スイッチャー』読んだ

安野たかひろさんはAIエンジニアであり、2024東京都知事選立候補者であり、学歴も華々しく、そしてSF小説作家でもある。彼の作品『サーキット・スイッチャー』を読んだ。

しっかりと、作家さんが書いたSF小説だった。安野さんこんな事も出来るんだ、と思った。歴代の東京都知事は作家さんもいるし、いつか安野さんも本当に当選するかもしれない。

自動運転を題材としたSFミステリー小説だから、読むつもりの方は下のネタバレは見ないほうがいいかもしれない。記憶を頼りにざっくり解説、抜けている箇所も多いです。

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【ネタバレかもしれない感想】

企業のコールセンターが沖縄にあったりして、現実感のある細かい演出がたくさん散りばめられていた。

プログラマー的世界観とイスラム教的世界観という一見合いそうもない2つの価値観を併せ持つことになった人物が、自身の世界の見え方を「3Dメガネを通して世界を見ているようだ」と例えたりしていて、文学らしさもある。

真の黒幕は中盤くらいで予想はつくが、ミステリー部分はあくまでエンタメ要素のひとつとして盛り込まれているわけで、そこは大した問題じゃない。それよりも、黒幕が問題行動に手を染める理由とそれをこなすだけの能力がきちんと描写されていて、こいつならやりかねないという説得力が確かにあった。

高学歴でAIエンジニアの作家とだけ聞くと、合理的で論理的な話ばかりなのかと思うかもしれない。実際、事件の内容は思考実験を膨らませたもの。しかしそればかりではなくSFの醍醐味である特定の環境で人間はどう考えどう動くかもきちんと描かれていて、胸アツ展開もある。

起業やビジネスにつきものの、裏切りもしっかり描かれているし、物語で重要な役割を担っている。不要な部分が少ない。

最後、主人公は社会の発展を止めずに、事件の被害を最小限に抑えるためには、自身が経済的損失を被るしかないと考えて、決断し行動する。安野さんは選挙期間中に、システムの改善に一番興味があって、実現するためには首長になる必要がある。もし首長になれなくても、そこに携わることが出来れば、と語っていた。作者本人の理想が主人公の行動に現れている気がした。

本当のラストにもひねりが加えられていて、それがあるだけで話に奥行きが出る。こういうことをちゃんとするんだ、と思った。読み進める中で積み重ねたこの本への信頼が、さらに厚くなった。

読後感も清々しくて、エンタメとして成立してる。本当のラスト部分は最近よんだテッド・チャンの『息吹』とかでもあったような、運命と人生について考えさせられる感じだった。

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