スーパー戦隊のヒーロー側をMBTI分析してみた、『激走戦隊カーレンジャー』(1996)編
さて、最近クソ真面目な社会派のことばっかり書いてたので、久々にリハビリというか息抜き企画で戦隊シリーズのMBTI分析をやりましょう。
本日は『激走戦隊カーレンジャー』(1996)です。
レッドレーサー/陣内恭介
ENFJ-A(自己主張型の主人公)
「猿顔の一般市民」ということで劇中では実と並んで弄られ担当にされがちな恭介ですが、実が「THE・弄られキャラ」なのに対して、恭介の場合は「天然」の気質が強く描かれているのが大きな違いです。
浦沢脚本のテイストから3枚目気質に描かれていますが、劇中の描写をよくよく見ていくと彼は典型的なENFJ(主人公)ではないかと思うのです、いざという時のセリフが妙にクサい感じとかもろに「主人公」という感じ。
初期は少し自分中心なところがあったのでI(内向型)かと思いましたが、3話で自分の怠惰によって仲間をピンチに追いやった責任感から非常に正義感の強い江戸っ子気質をむき出しにしていくのでE(外向型)と判断しました。
またNFに関しては自分の直感を信じることが多く、またゾンネットとの恋愛がそうですが割と感情に左右されながら動くのでF(感情型)であり、J(判断型)も基本的に一度こうだと決めたらそれ以外の選択肢を潔く切り捨てています。
後述しますが、他の4人が全員P(知覚型)で他者に対してジャッジをしないので、その分決断力が恭介一人に集約され、また同じJ(判断型)のシグナルマンとの微妙な違いになっているというのも大きいでしょうか。
シグナルマンが割と宇宙警察としての規律に基づいて判断するという生真面目な仕事人間であるのに対して、恭介はその場その場に応じた最適解を瞬時に導き出す咄嗟の判断力に優れているイメージです。
ボーゾックも含めて全体的に柔軟というか割と自由に動くメンバーの多い中で、恭介は実際のところ言うほどコメディアン気質でもなく、未熟ながらしっかり主人公としての役割を果たしていたと思います。
「カーレンジャー」の5人のメンバーに関してはそこまで深い思い入れはないのですが、嫌いにならずに済むのも中心にいる恭介がきちんとレッドとして立っていたことが大きいでしょう。
ブルーレーサー/土門直樹
ISFP-T(慎重型の冒険家)
典型的な熱血リーダーの恭介や人情家の実と違ってクールというか知的なイメージがあるのですが、いわゆる「冷静沈着な参謀」というより「芸術的感性がお洒落である」というのが劇中の描写からは窺えます。
最年少のお坊ちゃん気質というのも大きいと思うのですが、基本的にはカーデザイナーという役職で個性を発揮しており、好奇心旺盛で探究心があるところから典型的なISFP(冒険家)だとわかりました。
「〜でございます」というバカ丁寧な言葉遣いや押しに弱いところからI(内向的)かつT(慎重型)であるのはわかるし、割と目の前の現実に即して対応する39話の例があるのでS(感覚型)です。
そしてF(感情型)に関しても基本的に相手の気持ちに寄り添いながら生きていますし(誕生日の件とかめっちゃ気にしてたし)、また可能性を常に探っているのでP(知覚型)という判定に。
似た気質でいうとISTP(冒険家)の菜摘との対比が面白く、曽田博久さんが書かれた菜摘が直樹を自分の弟にしようと振り回すくだりはまんまISFPを自由気ままに振り回すISTPの図でした。
なまじ職人気質という似通った部分がありながら、菜摘がA(自己主張型)で直樹がT(慎重型)という大きな違いがあることから、噛み合っているようで全く噛み合ってないのが特徴的です。
基本的に力関係は年齢差も含めてどう考えても菜摘>(越えられない壁)>直樹だったので、見方によってはいじめ寸前に見えることもあるのではないでしょうか。
他メンバーとの相性でいうと地味にENFP(運動家)の上杉実との相性も抜群なのですが、劇中であまりそう見えないのは年齢差や立場・給料の違いなどもあるからかと思われます。
グリーンレーサー/上杉実
ENFP-A(自己主張型の運動家)
彼に関してはもう典型的なENFP(運動家)であり、恭介の項目でも書きましたがとにかく本作における「THE・弄られキャラ」、もうとにかく恭介から菜摘から容赦無く突っ込まれるしと踏んだり蹴ったり。
営業職で一番給料が低いという妙に生々しさを感じさせる設定や中の人が阪神ファンであることも含めて、とにかく「社交的で心が寛大な人=いい人」のイメージを地で行くようなタイプです。
歴代戦隊でいわゆるキレンジャー(コメディリリーフ)ポジションは大体ESFPかENFPが来ることが多く、本作では実とESFP(エンターテイナー)の洋子がそこを担当しています。
とにかくコミュ力がメンバー一高いのでE(外向型)、自分なりの理想があって直感で動く点が恭介と同じなのでN(直感型)、また感情に流されやすいのでいうまでもなくF(感情型)かつA(自己主張型)です。
そしてこれが恭介と実の決定的な違いですが、恭介はJ(判断型)なのに対して実は相手に寄り添っていろんな可能性を模索するP(知覚型)というところだけが違うのです。
彼らのキャラクター性が対比として出たのが子供達の宿題で揉めた24話であり、これはもう典型的なENFJとENFPの価値観の衝突で、例えるなら恭介と実の関係は直樹と菜摘の関係に近いでしょう。
似たところはありながらも判断の仕方が決定的に違っているのと、自己主張型か慎重型かというところで子供達の自主性でさせるべきという恭介と手伝ってあげるべきという実の大きな差となりました。
また、彼のメイン回として一番欠かせないRVロボ浪速スペシャルの回は良くも悪くも「これが実だ!」という特徴が非常に強く出ており、彼の存在があったから作品全体が柔らかくなっているのです。
イエローレーサー/志乃原菜摘
ISTP-A(自己主張型の巨匠)
菜摘に関してはもう44話のモンキーレンチの回が示しているようにISTP(巨匠)であり、実は5人の中で一番異質というかカーレンジャー色が意外と薄いのですよね。
とにかく自分の仕事に高い誇りを持っていて気が強いのでA(自己主張型)、基本的には自分の仕事に専念していてあまり干渉しないのでI(内向型)というのが劇中から窺えます。
また、直樹と同じで目の前の現実やトラブルに対応していくところなんかはもろにS(感覚型)であり、また他のメンバーと違うのは唯一のT(理論型)であるということです。
他のメンバーが割と感情面で動きがちな中で菜摘は基本的に自分なりの理論に従って動いており、また可能性を常に模索しながら動くのでP(知覚型)ということになりました。
メンバーとの関係性でいうと似た気質を持つ直樹に関してはここでは割愛するとして、もう1つ印象的だったのはファンの間で語り草となっている6話の洋子との一方通行です。
洋子が菜摘の男勝りな性格にきつい弄りをして彼氏にフラれた発言からヒートアップして拗れましたが、こんなのはごく一部で2人はおそらく日常的にこんな喧嘩をしているのだと思います。
一匹狼のISTPとエンターテイナーのESFPってSPという点以外は共通しておらず、しかもお互いにA(自己主張型)だからとにかく引くことを知らずに衝突してしまうのでしょう。
チームとして間に恭介らが入るくらいでちょうどバランスのいい関係になるわけであり、こう考えるとカーレンジャーの中では数少ないシリアス担当ともいえます。
ピンクレーサー/八神洋子
ESFP-A(自己主張型のエンターテイナー)
洋子に関してはENFP(運動家)の実と似ていますが、大きく違うのはやはりN(直感型)かS(感覚型)かというところであり、実がとにかく人情家なのに対して洋子はとことん楽しいこと大好きです。
何せ職務中にいつも隠れてケーキを食ってますし、実の次にコミュ力がありながら夢見がちでアイドルになりたいというところから生粋のESFP(エンターテイナー)っぷりが描かれていました。
基本的にはE(外向型)で自らの快楽のために動いているのでF(感情型)、そして常に楽しいことを模索しているのでP(知覚型)と、とにかくお転婆娘っぷりが強調されています。
そんな彼女がなぜ経理という生真面目さがものをいう職種についているのかは謎ですが、彼女に関してはダイエット回といい伝説のイモタク回といい、メイン回は実と並んでハズレなしです。
メンバーとの関係性や相性でいうと一番相性がいいのはENFP(運動家)の実なのですが、劇中であまりこの2人が会話するところがないせいかそういう印象がありません。
また、相性的なことで言えば直樹や菜摘との相性があまり良くなく、恭介とも実は特殊な関係性なので、彼女だけ単独のメイン回が多かったのは他メンバーと絡ませづらかったのも原因かも。
まずアイドルになれることを夢見るエンターテイナーというだけでも相当な飛び道具なのに、それを受け止められる人がなかなかいないせいか彼女の回だけ妙に浮いていた印象です。
ただ、逆にいうと、だからこそ他の4人やシグナルマンとは違う方向でぶっ飛んだキャラづけにできたわけであり、これをより肥大化させたのが『電磁戦隊メガレンジャー』のメガピンク/今村みくだといえます。
シグナルマン
ESTJ−A(自己主張型の幹部)
基本的に個性派というか癖の強いカーレンジャーの5人に対して、シグナルマンは徹底したESTJ(幹部)として描くことによって、「カーレンジャー」の世界にとって良くも悪くも大きな劇薬となりました。
通常の戦隊であればリーダーかサブリーダーに来る造形ではあって、実際『電磁戦隊メガレンジャー』のメガブラック/遠藤耕一郎はキャラ造形としてシグナルマンの規律バカっぷりを継承しているといえます。
まず評価としては家族を大事にし自分のことよりも宇宙の平和に目が向いているのでE(外向型)、目の前の現実に対応していくのでS(感覚型)であり、かつ感情ではなく規律で動くのでT(理論型)です。
そして宇宙警察としての厳しい判断のもとに動くので恭介と同じでJ(判断型)、尚且つボーゾックとの戦いにも自分ルールを適用して割り込んでくるのでA(自己主張型)となりました。
この時代はまだスーパー戦隊において「追加戦士」の概念が固まりきっていなかったからこそというのはありますが、「カーレンジャーの敵ではないが味方でもない」という絶妙な第三勢力ポジションです。
そこに来たのがとにかく規律にガチガチに縛られる固いキャラというのが逆に珍しく見えるくらいですが、そう考えると本作はキャラの骨子自体はオーソドックスでありながら、動かし方と味付けが異様なアレンジが加わっています。
惜しむらくはクリスマス決戦編〜最終決戦における終盤で活躍らしい活躍が44話以外あまり見られなかったことですが、この反省が翌年のメガシルバー/早川裕作や黒騎士ヒュウガに生かされているのではないでしょうか。
カーレンジャー以上に容赦無くボーゾックを倒せるのは彼くらいしかいないので、もっとその辺を全面に押し出したらよかったと思いますが、その辺りも含めて実験的要素の強い番外戦士というところかと。
まとめ
久々の戦隊ヒーローにおけるMBTI分析でしたが、個人的に一番驚いたことはレッドレーサー/陣内恭介がまさかのENFJ(主人公)だったことであり、これはありそうでなかなかない造形ではないでしょうか。
「猿顔の一般市民」だの何だのといじられますが、恭介が中心にいなかったら絶対「カーレンジャー」は戦隊として成り立たなかったと思うし、この造形だからこそ時折見せるクサいセリフがカッコよく映えるのだと思います。
ただ、他のメンバーが揃いも揃ってP(知覚型)のゆるいタイプばかりなので、1クール目を終えた段階でガッチガチのESTJ(幹部)たるシグナルマンをカンフル剤として投入するといういうのはベストな判断でしょう。
もちろん、浦沢脚本ですからシグナルマンもギャグっぽい誇張されたキャラ付けにはなっているのですが、誰1人としてメンバーの個性が被らずに基礎基本が出来上がっているのは見事です。
個人的には本作に関しては「このキャラクターが特に好き!」という目立ったものはなく、強いていえば「5人1組のカーレンジャー」というチームとしての雰囲気が好き、まあ今風にいう「箱推し」というやつでしょうか。
個々のキャラクターの中で突出したドラマがあるというよりも、「5人でわちゃわちゃくだらないことをやってる」という雰囲気そのものがカーレンジャーというチームの良さだと私は思うのです。
そして、そんな彼らだからこそならず者のボーゾックや第三勢力のシグナルマンとの対比というかコントラストが光るわけでして、ここだけを見ると形式的には割と戦隊の王道には沿っています。
しかし、その意味内容(作劇)の部分でのキャラづけがものすごくスパイスを振り混ぜているから異色に思えるだけで、きちんとキャラ設計自体は計算の上で作られていることが一目瞭然です。
ごめんなさい、『超力戦隊オーレンジャー』(1995)や『侍戦隊シンケンジャー』(2009)辺りを飛ばして本作をやってしまいましたが、久々に分析・言語化してみて面白かったです。
この辺りのキャラわけから「カーレンジャー」という作品を考察してみるのも違った見え方がして面白いかもしれません。
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