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スーパー戦隊シリーズとCO(中央集権型組織)・DAO(分散型自律組織)の関係性(実践編・全体版)

1回目の記事ではCO(中央集権型組織)とDAO(分散型自律組織)の基本的概念を説明し、それがスーパー戦隊シリーズとどのような関連性を持つのか説明した。
2回目の記事ではそれを踏まえ、どのようにして歴代戦隊を分類していくのかに関する基準を「設定」と「描写」の2つに分けて定義し、更にそこから4つの判断基準を作っている。
今回は実際に歴代戦隊を4つの判断基準、すなわち「組織の公私」「トップの権限」「組織の完成度」「メンバーの関係性」で各戦隊を数値化していこう。

<分布図の判断基準>


  1. 「組織の公私」……組織の規律(=公)と個人の自由(=私)の割合。数値が高いと中央集権型、低いと自律分散型。

  2. 「トップの権限」……組織のトップ=司令官もしくはチームのリーダーが全体に及ぼす影響。数値が高いと中央集権型、低いと自律分散型。

  3. 「組織の完成度」……物語の始まりの段階で判断可能なチームとしての準備量。数値が高いとプロフェッショナル、低いほどアマチュア。

  4. 「メンバーの関係性」=正規戦士と非正規戦士の割合とチームカラーへの影響。数値が高いとプロフェッショナル、低いほどアマチュア。

この4つの判断を各1〜10点ずつで算出し、「組織の公私」と「トップの権限」の合計値が横軸(X軸)「組織の完成度」と「メンバーの関係性」の合計値が縦軸(Y軸)である。


歴代戦隊分布図サンプル

その数値の合計点次第でプロDAO(左上)アマDAO(左下)プロCO(右上)アマCO(右下)かが決まるが、例外的に軸の中間を取るという場合もあるだろう。
その時はその時でまた考えるとして、ほとんどの戦隊において合計値が中間になることはまずないと見積もった上で話を進めていくこととする。

改めて誤解しないように再三前書きしておくが、数字の合計はあくまでも「分類」に使うのであって「評価の良し悪し」として使うものでは決していない
いわゆる「公的動機」「私的動機」「自主性」「主体性」「絆」「使命感」「正義感」といった心の問題はあくまでも数値の大小として客観的に使わせていただく。
いよいよ実践編となるわけだが、スーパー戦隊シリーズの場合作品数が放送終了分まで含めて45ととても多いので、各戦隊の説明そのものは次回以降で行う。
今回はまず歴代戦隊の分布図を見渡し、そこから読み取れる分析結果について論じていくこととする。

<歴代戦隊の分類結果集計>


歴代戦隊分布図・全体版
  • プロDAO(左上)……6チーム(『超新星フラッシュマン』『星獣戦隊ギンガマン』『轟轟戦隊ボウケンジャー』『海賊戦隊ゴーカイジャー』『快盗戦隊ルパンレンジャー』『騎士竜戦隊リュウソウジャー』)

  • アマDAO(左下)……13チーム(『大戦隊ゴーグルファイブ』『光戦隊マスクマン』『超獣戦隊ライブマン』『高速戦隊ターボレンジャー』『鳥人戦隊ジェットマン』『未来戦隊タイムレンジャー』『爆竜戦隊アバレンジャー』『獣拳戦隊ゲキレンジャー』『烈車戦隊トッキュウジャー』『動物戦隊ジュウオウジャー』『宇宙戦隊キュウレンジャー』『魔進戦隊キラメイジャー』『機界戦隊ゼンカイジャー』

  • プロCO(右上)……14チーム(『秘密戦隊ゴレンジャー』『ジャッカー電撃隊』『バトルフィーバーJ』『太陽戦隊サンバルカン』『地球戦隊ファイブマン』『恐竜戦隊ジュウレンジャー』『超力戦隊オーレンジャー』『救急戦隊ゴーゴーファイブ』『忍風戦隊ハリケンジャー』『特捜戦隊デカレンジャー』『侍戦隊シンケンジャー』『特命戦隊ゴーバスターズ』『手裏剣戦隊ニンニンジャー』『警察戦隊パトレンジャー』)

  • アマCO(右下)……11チーム(『電子戦隊デンジマン』『科学戦隊ダイナマン』『超電子バイオマン』『五星戦隊ダイレンジャー』『忍者戦隊カクレンジャー』『電磁戦隊メガレンジャー』『百獣戦隊ガオレンジャー』『魔法戦隊マジレンジャー』『炎神戦隊ゴーオンジャー』『天装戦隊ゴセイジャー』『獣電戦隊キョウリュウジャー』)

  • プロハイブリッド……1チーム(『電撃戦隊チェンジマン』)

  • アマハイブリッド……1チーム(『激走戦隊カーレンジャー』)

<分布図から読み取れる傾向>


想定以上に綺麗に棲み分けされていることがわかるのだが、今回集計してみて興味深かったのは世間のイメージよりもDAO(分散型自律組織)タイプのチームが多いということである。
全46チーム中19チームと4割程はDAO(分散型自律組織)であることがわかり、うち5チームは80年代のスーパー戦隊において試験的に作られているということだ。
ただし、プロのDAOが6チームで、残り13チームが全てアマDAOであるという事実からもわかるように、まだ作り手の中にはプロフェッショナルのDAOがピンと来ていないのであろう。
また、作劇上から見るとDAOの場合プロフェッショナルよりもアマチュアの方が年間のドラマを自由に作りやすいという事情からこのような結果となっているのではないだろうか。

次にCO(中央集権型組織)だが、やはりスーパー戦隊シリーズは元来国家戦争をモデルに始まったこともあって、半数以上がCOタイプのチームであるというイメージは合っていた。
特に右上のプロCOは「戦隊」という単語を聞いたときにイメージする「戦隊らしさ=チームワーク重視」の象徴として描かれているのではないだろうか。
これは初代『秘密戦隊ゴレンジャー』がそういう作品だったからというのも大きいのだが、同時にこれは「滅私奉公」を是とする日本人らしい価値観のチームである。
一方で右下のアマCOだが、こちらがなぜこんなにも多いのかというと、やはり未熟な者には強力なカリスマ性を持った指導者が必要だからだ。

興味深いのは00年代以降になっても6チームがアマCOと過半数を超えていることであり、これはどういう理由かというと玩具販促を絡めなければならないという事情がある。
スーパー戦隊シリーズの場合大きな特徴としてパワーアップの武器と同時に追加ロボも出さないといけないため、子供向け番組として詰め込む物量は必然的に多くならざるを得ない。
そのような状況にあってはDAOよりもCO、すなわちナショナリズムに寄りかかって話を作る方が物語が作りやすいということをも意味している。
特に「ガオレンジャー」「ゴーオンジャー」「ゴセイジャー」はその典型で、主人公が素人の場合チームワーク重視にしてパワーアップを大量に盛り込めばいいという感じだ。

そして更に興味深いのはどのゾーンにも属さないハイブリッドの2チーム、すなわち「チェンジマン」と「カーレンジャー」の2チームがあり、どちらも噂に名高い名作・傑作である。
「チェンジマン」は軍人でありながら常に「組織」と「個人」の狭間で葛藤しながら戦っている戦隊であるし、「カーレンジャー」もある意味では裏「チェンジマン」と言えるだろう。
この2チームは常に個人事業主の側面とチームの一員という側面がバランスよく織り込まれており、だからこそ歴代でも類を見ないヒーロー像が作られているのではないだろうか。
全体としての傾向はこのような感じで、左上のプロDAOが6チームと極端に少なく、残りの3枠が圧倒的に多いことから今後はプロDAOがもっと出て来ることが予想される。

さて、次回はこの分布図の中から70・80年代戦隊(『秘密戦隊ゴレンジャー』〜『地球戦隊ファイブマン』)の分布図と傾向、各チームのカラーについて具体的に解説していこう。

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