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新テニの同士討ち展開からわかる、関東大会決勝D1で黄金ペアが仁王・柳生ペアに負けた理由

関東大会決勝の立海戦を読んでいて不思議だったのがD1の試合、黄金ペアが仁王・柳生ペアに負けた展開です。
個人的にあの試合は黄金ペアが勝ってもおかしくなかったし、何なら動物的カンで乾が柳に買ってしまったという方が個人的には違和感だらけでした。
まあS3に関しては真田の分析通り幼馴染だからという私情を挟みすぎたのが敗因だったわけですが、D1に関しては何が黄金ペアの敗因だったかは明言されていません。
気がついたらいつの間にか試合が終わっていたのでずっと引っかかりがあったのですが、新テニ序盤の同士討ちを比較してみて新テニのファンブック10.5を読むとその辺りに納得できました。

同士討ち負け組編と勝ち組編の黄金ペア対決について見ていくと、斎藤コーチがそれぞれこんなメモ書きを残しています。

大石秀一郎「相手の心がわかるのは諸刃の剣 相手の心を察し、敢えて厳しい言葉をかけましたか。優しいですね。」(p.23)
仁王雅治「策に溺れすぎる 策を仕掛けるのに夢中になり、相手の心を読み誤るとは詐欺師失格だな〜。」(同上)
柳生比呂士「観察力及び分析力に優れる 何気ない情報を元に詐欺を見抜くとは、やりますね、彼。」(p.59)
菊丸英二「甘すぎるメンタル コートに私情を持ち込むのはご法度。メンタル強化が急務ですね。」(p.62)

出典元:『新テニスの王子様 公式ファンブック10.5』

このように見ていくと明確に弱点が浮き彫りになりましたが、黄金ペアが仁王・柳生ペアに負けた理由が見えました。
一番の問題は菊丸のメンタルの甘さにあり、新テニでの菊丸のステータスを見るとメンタル2なので相当に脆弱であるといえます。
まず黄金ペアの対決を見ると、大石の堅実な守りのテニスではもはやパワーアップした菊丸のテニスを抑えることはできなくなっていました。
大石が言っていたように関東大会決勝の時点で既に菊丸は大石を超える実力を手にしており、比嘉戦では1人ダブルスをやってシングルスでも勝ち抜いてみせました。

前半の弱点だったスタミナ不足を低酸素運動で克服していましたが、それでも勝ちにこだわりきれないメンタルの甘さが足を引っ張っていた部分があったのです。
例えば最初に仁王の詐欺にハマってボールに当たってしまったり、また大石共々仁王と柳生が実は入れ替わっていたことに気づかなかったため、土壇場で精神を抉られました。
これだけならよくあることなのですが、菊丸も大石も裏表がなさすぎるために裏の裏をかいて勝ちを収める仁王・柳生ペアとの相性は究極に悪かったといえます。
黄金ペアとは対照的に仁王と柳生の同士討ちは知略合戦であり、仁王の手を全て熟知していた柳生が一歩先を行く形で勝ちを収めました。

ここが純粋で素直である黄金ペア非情のテニスを実践している仁王・柳生ペアとの大きな違いであり、思えばあの関東大会での敗戦が新テニへの伏線になっていたのですね。
そう考えると大石が代表に選ばれて菊丸が選ばれなかった理由も納得できます、土壇場で私情を排して勝負にこだわりきれない甘ちゃんが世界で通用するわけがないでしょう。
菊丸の人間性自体はやんちゃで荒削りだった1年のころと比べてだいぶ成長したものの、それでも感情に流されやすい心の甘さだけは3年になって全国優勝しても克服しきれないままでした。
このように見ていくと、旧作では悪の象徴みたいに描かれていた立海の非情のテニスも強ち間違いとは言い切れません。

また、新テニに入って菊丸と大石の絡みが最初の同士討ち以降ほとんどありませんが、それは連載の都合はもちろん大石が優しさと甘さは違うものであると思い知ったからでしょう。
負け組を経験した大石は原作に比べてだいぶ甘さを克服して強さを身につけ仁王と組んで同調を行って双子に勝ち、また中学生代表を取り持つ中間管理職としての役割を果たしています。
しかし菊丸と柳生が選ばれなかったのは勝ち組に入ったまでは良かったものの、そこから自分をどう成長させていけばいいのか行き詰まってしまったからではないでしょうか。
まあ柳生に関しては乾がそうであるようにミュージカルの役者の影響でお笑いというかネタキャラの側面が強くなって初期とは別物になってしまっている感はありますが(笑)

つまり大石の怪我がまだ完治していなかったというだけではなく、菊丸と大石が素直すぎて搦め手に弱かったことや菊丸のメンタルの甘さが何より影響を与えたのかなと。
黄金ペアは基本的に大石が全体のゲームメイクを行いその上で菊丸が自由に動くという形でしたが、天才肌であるが故に癖が強いピーキーな菊丸にはそれだけ弱点も目立ちました。
まああとは単純に菊丸自身がそもそもテニスで世界を見たいとか上を目指したいとかっていうモチベーションがそもそも不足しているというのも挙げられますが。
柳生も同じく、世界大会に向けて発展の余地と上昇志向がいまいち薄いキャラであったがために、そこが仁王や大石との差として出てしまったのかもしれません。

そう考えると仁王が詐欺として使っているイリュージョンを捨ててしまったのは勿体無いなあと思ってしまいます、あれってダブルスでは有効だから
シングルスでは無理がありますがダブルスで勝つならあれほど有効な手もないので、その路線を極めて生き残っていくという手もあります。
ただまあ、そんな読者が考える程度の浅知恵など許斐先生は当然わかっているし、もう黄金ペアは描きつくしたから掘り下げようがないというのが実情でしょう。
最近は「ダブルスならではの戦い方」というより「各々がシングルスの戦い方」をするもの同士の化学反応みたいになっていますから、あまり見応えのあるダブルスがないですね。


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