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32日目 リソグラフから始めよう

どう転ぶかわからないものが好きだ。再生産できるものよりも、再現できないものが好きだ。神戸市西区でやっている「西神中央クロッシング」のvol.3はイラストレーターで作家のmannaさんを講師に迎えてチラシのデザイン・お知らせの伝え方を学ぶ回。mannaさんは塩屋でリソグラフ印刷の技術スタッフでもある。

西区役所の地域活動支援室にもリソグラフが常設してある。そこで、「西神中央クロッシング」のチラシデザインもお願いした彼女にリソグラフを使ったチラシづくりのレクチャーを依頼したという流れである。ところが1つ困った問題があった。西区のリソグラフはまだインクドラムが黒1色しかない。多色を重ねて印刷して鮮やかで風合いある印刷ができるリソグラフの特徴がいかせない。どうするべな。

頭を悩ませたときに、mannaさんが提案してくれたのがコラージュの手法である。彼女は絵を描いて残った絵の具をあまり紙などに塗って「色のきれはし」として保管していて、それを作品の素材にしている。1色しかだせないのであれば、森の葉っぱや黒色の「色のきれはし」をハサミで切って貼って各々で模様をデザインし、印刷した後でスタンプや色鉛筆、蛍光ペンで着色すれば、世界で1枚しかないチラシの出来上がり。これなら子どもでも楽しめる。大事な開催日や時間の情報だけは台紙に共通のデザインとQRコードを入れておくことでチラシとしての役割を果たしてくれる。

つまり、区民の皆さんがそれぞれにコラージュしたデザインに色んな人が色を着けていく。それが街中にあふれていく。「まちを主体的に楽しむ人を増やす」という「西神中央クロッシング」のコンセプトそのものである。私はこうした、どう転ぶかわからないでもその先の広がりが予め準備したものより面白くなりそうな手段がとても好きだ。上手くいくかわからないが、講座の最中からひとりニヤニヤと笑いが止まらなかった。

10数人の参加者が作ったチラシを10枚づつリソグラフでmannaさんが印刷して持ち帰ってもらった。100数バージョンのチラシが西区のまちにあふれていくのが楽しみだ。今回できたチラシはInstagram等でも公開したい。まちでもし世界に1枚しかないチラシをみかけたら#で投稿して広めてほしい。地域活動支援コーナーのリソグラフの活用モデルにもなった。

なんだかmannaさんの魔法にかかったみたいに、イベント周知のアイデアが連鎖していった。魔法のつづきはこれからきっと起きるだろう。午後14時。少し遅めであるが昼食。手のひらサイズの釜がカタカタカタと音をたててお米が炊き上がっていく。心地よい充足感のまま、私たちは釜飯定食を食べた。


20231007

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