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見えなくなったのはいつからだったけ。
霞んでしまったのはいつからだったけ。
目を凝らしたらぼんやりと視える気がしてさ、
立ち止まったまんま、立ち止まったまんま。

曇り空橙色が見えない17時半、
ボロボロのチェリオの自販機の前で、胡座をかいて座っている。
あの日投げつけた言葉を何度も反芻しては、
気の抜けた清涼飲料水がこみ上げてくる。
吐き出しても楽なのは一瞬で、
胃液で爛れた喉は、鈍い痛みで苦しめる。
ペットボトルの結露でできた水溜りに反射したくしゃくしゃの顔は
 あの時あいつみたいで
泡だらけの唾で水面を濁す、これも多分喉の痛みのせい。


知ってたさもちろんどうでもいいなんてのは、
ただの去り際の捨て台詞で逃げ出したのは自分なんだって。
見えないことをひたすらに嫌がって、泣き出すもんだから、
不器用な自分に嫌気がさして漏れ出したため息みたいなソレ

そんなつもりないんだ、、なんて独りで呟いたっけ。

あれから数日間ずっとここで座ってる、
いつも吸う煙草もあと2本しか残ってない、
歩くと15分くらいかかるコンビニさえ、すごく遠く感じてしまって
何してんだか嘲笑って伸びきったTシャツの袖で顎を拭う。

曇り空灰色しか見えない23時、
横の電信柱でもたれかかったまま、掻き毟るぼさぼさの頭。
さっきの投げつけられた瞬間の顔に何度も火をつけては、
副流煙が瞳を突き刺す。
拭ってもう一度咥えて吸い込む、
フィルターが近づいて唇を火傷してもな尚。
曲がった吸殻で出来た山が
まるで自分みたいで。
腹減ったななんてバカな顔して帰ったら怒るかな。

見えなくなったのは誰だっけ。
霞んでしまったのは誰の方だっけ。
目を凝らしても見えない気がするから
軽やかな足取りで踏み出しちまえよ




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