
縄跳びを飛んでいる、ずっとずっと。
足首はとうの昔に悲鳴ををあげているのに、
嫌なことから逃げ出すように。
飛び跳ねること、縄を回すことをやめてしまったら
死んでしまう気がして。ずっとずっと
まだ声が出ることを確かめながら、
平然を装うようにあの子が歌っていた曲を、
うろ覚えながらも鼻歌で、
音はまばらで不規則だけど、少しだけ心地良くて。
少しだけ腕が痛くなった時ふと大人を感じる。
ゆっくり飛べばいいじゃんそんな横槍が飛んできても
胸に突き刺さっても僕はやめない、やめたくない。
知ってる。いつ終わりが来るかも、いつやめたくなるかも
鼻頭にアオスジアゲハが止まって
宥めるように、宥めるように
日が暮れても、鳥が泣き出すころになっても、
やめない、止めることなんて僕にはできない。
自分のペース、休憩の仕方を掴んだところで
鳩時計が20時を知らせる。
嗅覚が、景色の向こう側まで、教えようとしてくるのを、遠ざけながら。
そんな時、何故だろうか、縄はいつもより長く太くなって、
回すのが辛くなってくる。
持ち手の反対側を微笑みながらつかんで、
「一緒に飛ぶよ」
そう言って、飛び始める。
少しだけ足の裏がむず痒くなるのを感じながら、
余裕そうな顔してる君を横目に。
少しだけ嫌いだったその顔も隣にいると心地よくなってしまって
何故だろう、回すのが楽になった気がして
21時の鐘は気づかないにうちに鳴り響く。
靴のすり減りと砂利の鋭利さを受け入れていたと感じる。
まだ変わってない縄の長さ、太さに気づいた時、
つまづいた時脛のあたりが痛くてたまらなくなることを思い出す。
片手で跳べていることの心地よさ、誰かと飛べていることの安心感を、
だからこそ、いつもより早く廻す廻す。
でも知ってる、ズレが大きくなるほど
跳びズらくなってしまうことを引っかかって
邪魔に、そしていなくなってしまうことを。
気がついたときには遅かった。
そう後悔しないように、今更かな?少しだけゆっくり廻す。
今ならそうじゃないよ、そう言ってもらえる気がして。
縄跳びを飛んでいる、ずっとずっと。
今後飛び続けるかもわからない、だけど。
これが好きだと信じられるように。
飛び跳ねられること、縄を回し続けると信じて
ずっと、ずっと、ずっと。
2020_07_03_am01:57