陸のさかな

わたしは魚。水の中を自由に泳ぐことができる。行きたい所に行ける。進みたい方向に進むことができる。

ただ、時折もつ違和感。自分が行きたい方向に進むことができない窮屈さを感じる時がある。

わたしにはともだちがたくさんいる。わたしのともだちは皆、すきなことに一生懸命。それは、陸に上がって生活をするため。

ここでは6歳になると皆、陸に上がって生活をする。皆、その準備をしているのだ。

陸に上がったおとなたちは、皆大変そう。魚は陸では呼吸ができないとみんな知っている。でも、わたしのともだちは毎日一生懸命おとなになろうとしている。

わたしには気になる魚が1人いる。いつもは姿を見せないが、たまに遠くの方を泳いでいるのを見かける。なぜか、わたしはその魚が気になって仕方がない。

わたしのともだちが、陸に上がるために毎日一生懸命になっているのに、あの人は泳いでいる。

あの人の姿が見えたときにもっと近づこうとするんだけど、わたしの目の前には見えないガラスの壁があって、それ以上先へは泳げないんだ。

わたしのお母さんは、ガラスの外は危険がいっぱいだからって言うんだけど、わたしはそれでは納得しない。


そして、6歳になった。

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