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「思春期のからだ」

● 悩み多き時期,思春期

 昨日の学級の時間は,学年そろって「性教育」をしました。
さて,ボクはまず黒板に,「○○○」
 「漢字3文字が入ります。これは,あなたたちのことです。」
 「ヒント,ボクのことではありません。」
相談する中で上がってきたのが,
 「中学生」(みんなの反応)そりゃそうだ
 「小学生」~~アハハ ~ 違うでしょ
 「女子力」~~男子だっているぞ  
 「積極的」~~消極的
 「犯罪者」~~ボク「そんな人はいません」

相変わらず豊かな発想が飛び交います。
そしてようやく,「思春期だ!」
正解です。
1学期に,「思春期の〇〇〇」というビデオを見たのを覚えていますか。○○○はひらがな3文字です。
「えぇ~なんだっけ」 これまたアレコレ飛び交いますが,正解は出ません。みんな忘れちゃったようす。
思春期のこころ,です。」何人か思い出した様子。
「前回が,〈こころ〉だったので,今回は・・・〈からだ〉です」

「保健体育の授業で、もうすぐ〈二次性徴〉の授業をするそうです。だから,そちらで教わることは今日は取っておくことにするけれど,〈二次性徴〉とは,あなたたちのからだが大きく変化する時期です。

ちなみに〈二次〉はあるけれど,〈三次性徴〉はありません。
どうしてかというと,〈二次性徴〉で,〈子どものからだ〉が〈おとなのからだ〉に変わります。大人になっちゃったら,もうそれでおしまい。次の変化はありません。

「それでね,この時期はね,いろいろと困るの」~~なんで
「だって,自分の身体でそれまでなかったようなことがいろいろ起きるんだよ。しかも,どうしてそうなるかとか,どうすればいいのかとか,わからないんだ」
 
「だれかに聞きたいけれど,なぜだか〈親には聞けない〉って思うのね。
だからと言って,友だちに聞くのもね・・・下手に言ったらどうなる?」 
~~ 笑われる からかわれる 
「でしょ」
「だから本当にどうしたらいいか困るんだ」
うなうなしている人がチラホラ。やっぱりそうなんだよね。

「今日は,ある中学校の先生たちの昔話を読みます」
「先生たちだって,中学生の頃にいろいろ困って何とかしようと,大変だった話です」
「もし,こんなことが起きたら,自分だったらどうしようか。そんな気持ちで読んでください」

● 病気になっちゃった

 男子A先生。ある日ペニスの先が痛くなる。ついには膿が出始めた。
さて,どうしたか。予想を選んでもらいました(人数は大体)。
 ア.親に相談した2名 
 イ.担任に相談した3名
 ウ.保健室の先生に相談した 8名 
 エ.友だちに相談 0名
 オ.誰にも言わず我慢 10名 
 カ.一人で医者に行った 5名

A先生は,一人で我慢して,病状は悪化。
ついに親に告白。医者に治してもらいました。

● 正露丸では治らないのに

 女子B先生。生理痛がひどくて保健室へ,でもそうは言えずに腹痛を訴えたところ,保健室の先生は正露丸をくれた・・・さて,どうしたか。
 ア.正露丸は飲まず,生理痛と言って休ませてもらった。3名
 イ.正露丸を飲んで,一人で我慢した。2名
 ウ.正露丸を飲まず,一人で我慢した。14名
 エ.友だちから保健室の先生に話してもらった。0名
 オ.正露丸は飲まず,早退した。 8名

B先生は,本当のことを言えず,でも正露丸は飲む気にはなれず,
一人我慢を続け,よろよろと下校しました。

● 一人で悩まずに,信頼できる大人に相談する

 テキストはA先生とB先生のつぶやきに移ります。
結論を言えば,〈性のことで困ったり悩んだりした時は,信頼できる大人に相談するのが一番〉ということです。

「大人は,あなたのことを言いふらしたりしません」
「うちの子ペニスが痛いんだって~,なんてご近所に話す親はいません」「○○は今日生理だぞ~,なんて言いふらす先生はいません。」

「ちなみに,〈信頼できる〉というのは,
〈言いふらさない〉とか〈お金儲けの対象にしない〉という意味です」

授業はここまで。みんなの感想を何人か紹介します。

・A,B先生へ,体験談を聞かせていただきありがとうございました。身体のことは人に話せないし勇気がいると思います。これを聞いて恥ずかしがらずに,大人に相談した方がいいということが大切なんだなと思いました。        (女子)

・A先生へ,オキシドールだけは止めましょう。聞いているだけで,「うわ~」ってなりました。 (男子)

・A先生へ,そういうのは早く親に言うべきだと思いました。 たぶん,ぼくだったら言います。(男子)

・B先生へ,私は(生理が)まだ来ていないので痛みなどは全然わかりません。気持ち次第で和らげることができるのならば,何か楽しいことを見つけておいたほうが良いかなと思いました。(女子)

・B先生へ,あなたはきっと気が弱いんです。今の女の子はプールのときとか,“私は今日生理なんだよね~”とか言いますよ。親にも全然言える~。男の先生にはイヤだけど~。(女子)

・ B,A先生へ,性に関することって,友だちに言えないことや親にも言えないことは,たしかにあると思う~。(女子)

・B先生へ,私もはじめそういうことがあって誰かに相談しようと思ったけれど,言うことができませんでした。お話を読んで知りたいことが分かってためになりました。(略)分かりやすく書いてくださってありがとうございました。(女子)

授業のためになった度
5:とてもためになった。
4:ためになった。
3:どちらともいえない。
2:ためにならなかった。
1:まったくためにならなかった。

男子 5:1名,4: 8名 ,3:7名,2:0名 1:3名
女子 5:7名,4: 8名,3:5名,2と1は0名。

アンケートに書いてもらった悩みや相談は,すべて保健室のN先生に読んでいただきます。「保健だより」で回答をくださる予定なので楽しみに待っていてください。

―― 以上です。
これは2012年11月に,中学1年生向けに書いた学級通信です。
「性教育」という名称は現在使われていないようですが,そのことはさておき,学級担任のセンセイたちにはけっこう頭が痛い授業ではないでしょうか。ボクも必要性は分かりつつ,20歳代の頃は,とてもやりにくくて困りました。思春期真っただ中の中学生たちは,授業中にムズムズしてたまらない。下を向いたままだったり,机に突っ伏したり、ともかく周囲の子に評定や反応を悟られまいとする。かたい空気を和らげようと,無理に明るく振舞うと,女子から軽蔑の眼差しを向けられたりする…。

いろいろ勉強を重ねて30歳代に自作資料をいくつか作り
40歳代の勤務校で,保健室の先生や他の先生の協力が得られて,いくつもの資料を作り市内の保健指導部会で発表して他校でも実施してもらえるようになったり,積み重ねてきました。

この授業は,「思春期のからだ」と題しつつ,〈二次性徴〉そのものは扱いません。それは保健体育の授業があるので,そちらにお任せします。保健体育の先生には,予めこの授業のテキストや様子を伝えておきます。この授業の目的は「一人で悩まないで信頼できるオトナに相談しよう」です。同時に「先生たちは信頼できるオトナだよ」と思ってもらうことも大切な目的です。

 授業の様子を学級通信にまとめることは2つの意味で重要視しています。
一つ目は,保護者の方に学校での取り組みや子どもたちの〈胸の内〉を知っていただくこと。
二つ目は,子どもたちが同士がお互いの〈胸の内〉を知り合うこと。
AB両先生の事例でも分かるように,性の問題で困ったことがあっても,友達に相談するという選択肢を選んだ人は誰もいません。きっと,2023年の今でも,全国どこの学校,学級でも同じ傾向が出るのではないでしょうか。
でも,本当はそうしたことができるような,少なくとも察しあえるような人間関係を築き上げていくことも,思春期を生きる中高生には(いや小学生にも)大切だと思うのです。

長くなってしまいました。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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