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「おろかであれ」

● スティーブ・ジョブズ氏を知っていますか

 あなたは,スティーブ・ジョブズ氏を知っていますか?
先週その死が大きく報道されたので,「あぁ名前は聞いたことがある」という人が多いでしょう。米国の巨大企業アップル社の創業者であり,斬新なデザインのパソコンやipod,iphoneを世に送り出した人,だそうです。

 ボクには無縁の製品が多いので今ひとつピンと来ませんが,「その訃報(ふほう=亡くなった報せ)を,多くの人が,氏が世に出したスマートフォン(多機能携帯電話)で知った。悼む(いたむ)言葉(死を惜しむ言葉)がツイッターで世界中にあふれた」(朝日新聞10月8日朝刊「天声人語」より)のだそうです。

 今年アラブ世界で続く政変や世界各地の若者が集団で立ち上がるときに情報伝達機能としてツイッターが大きな役割を果たしていることは知っているので,ようやく何だかスゴイ人だったんだなと思えてきました。

● ジョブズ氏が遺した言葉

 ジョブズ氏は単なる大企業の社長とか発明家とかを越えた存在だったようで,多くの言葉が語り継がれています。中でも,6年前に米国のスタンフォード大学で卒業生に贈った言葉が有名です。

「Stay hungry.  Stay foolish. 」
「がむしゃらであれ おろかであれ」。

氏の演説全体を知らないので,どんな意味なのか推し量ることはできません。しかし,友人のYoさん(京都・小学校教員・仮説実験授業研究会会員・古代ギリシャ研究家)からのメールが印象に残ったので紹介します。

● 分からないことは分からないと言おう

 私もずっと,ジョブズのことを考えていました。
彼は,スタンフォード大学の卒業式で「おろかであれ」と言ったそうですね。その真意はいったいなんだったのだろうと考えてました。やっと私なりの結論がでました。それは
「わからないことをわからないと言おう」
「楽しくないことは,楽しくないと言おう」というものです。
「わからない」と人前で言うのは,勇気がいることです。
でも,そう言える人が 新しい時代を切り開いてきたんだと 思います。
誰でも使えるコンピュータ, 誰でも楽しめるコンピュータ, 
ジョブズ氏は新しい製品を送り出すときに,それが人々を楽しませるかどうかをもっとも気にして,完璧に仕上げることを要求したそうです。

こうした考え方は仮説実験授業の授業書を開発する人々ととても良く似ています。板倉聖宣氏をはじめ授業書を開発する人々は,「この問題を子どもたちは喜んで考えてくれるだろうか,このことが分かったら子どもたちの人生にどんな意味が生まれるだろうか」と気にしながら,一字一句に至るまで考え抜き「がむしゃら」に研究を進めます。
学問の世界で〈常識〉と思われていることにあえて挑戦する「おろか」さを発揮して研究を進めます。
できあがった授業書を手にする先生や子どもたちの笑顔をみたくて開発しているのです。
―― こういう人たちの仕事は信用できる。
ボクはそう思って,あなたたちと仮説実験授業をしています。

―― 以上です。
これは2011年11月に中学3年生向けに書いた学級通信です。進路選択真っただ中の子どもたちに,少し先の進路もおぼろげに考えてほしいなと思いました。内容的には2023年の今も色褪せないと思います。ちなみに、ジョブズ氏の言葉の日本語訳はボクの意訳です。たいていは「ハングリーであれ,愚かであれ」と綴られますが,ハングリーだけ英語というのは、いかにも座りが悪い。というか,ジョブズ氏の意思を理解していない気がして納得できませんでした。そこで考え抜いた挙句に辿り着いた訳語ですが,いかがでしょうか。もっとピッタリくるという訳語をご存じでしたら、ぜひ教えてください。また「仮説実験授業」は、ボクが長年取り組んでいて、どこの学校・学年・クラスの生徒からも歓迎されている教育です。

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