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マンガの新刊発売に気づかないので、リストにしてみた

最近、単行本を集める漫画の新刊発売に気づかないことが多い。運が良ければたまに開くTwitterのタイムラインで気が付くけれど、マイナーなものだと気づかないまま数か月過ぎていることもある。別にいいんだけれど、不思議と損した気分になってしまう。

ということで、できるだけ見落としがないように、今追っている連載中の漫画を棚卸しリストにしてみた。
34つ追っていることに我ながらちょっと多いなと思った。他の人ってどのくらいなんだろう?
実際に文字でタイトルを並べると、俯瞰の目でいま自分を構成する漫画の傾向がわかり、ちょっと自分を見つめなおすようで面白かったので、noteに残してみる。

なお、追っている漫画群にまとまりがないのが第一の原因である、というのは自覚している。雑誌の購読は週刊ジャンプくらいしかせず、好きな作家さんが勧めていたりモチーフにしているものを当たったり、本の索引の根を辿っていくようにして新しいタイトルに出会っているためだ。

週刊や月刊、はたまた不定期な連載により販売サイクルは混在し、Kindleのお知らせがもうちょっと気まぐれじゃなければいいのだけれど、そもそも電子版のない「よつばと!」もあったりで、てんやわんやしている。

ついでに、面白さと知名度のバランスがとれていなさそうなものを中心に5つほど、おすすめも挙げてみます。
普段漫画をよく読むひとからすると有名なものばかりではあるけれど。

以下リストです。

作品名(既刊)/掲載紙/ジャンル/その他 太字は後述のおすすめ

・『チェンソーマン』(11) /週刊少年ジャンプ/ダーク・ファンタジー/1部完
・『推しの子』(3)/週刊ヤングジャンプ/アイドル、群像劇?
・『山と食欲と私』(13)/月刊コミック@バンチ/登山、料理・グルメ
・『北北西に雲と往け』(5)/ハルタ/ミステリー
・『ブルーピリオド』(9)/月刊アフタヌーン/群像劇
・『ワールドトリガー』(23)/ジャンプSQ(月刊)/少年漫画、バトル
・『左ききのエレン』(16)/少年ジャンプ+/群像劇
・『違国日記』(7)/FEEL YOUNG/ヤング・レディース、群像劇?
・『ゆるキャン△』(12)/まんがタイムきららフォワード/キャンプ、旅行
・『ゴールデンゴールド』(7)/月刊モーニングtwo/サスペンス、ホラー
・『宇宙兄弟』(39)/モーニング/ストーリー漫画
・『葬送のフリーレン』(4)/週刊少年サンデー/少年漫画、ファンタジー
・『スキップとローファー』(5)/月刊アフタヌーン/コメディ?
・『チ。-地球の運動について-』(3)/ビッグコミックスピリッツ/青年漫画
・『君は放課後インソムニア』(6)/ビッグコミックスピリッツ/ラブコメディ?
・『不滅のあなたへ』(15)/週刊少年マガジン/ファンタジー、少年漫画
・『女の園の星』(2)/ FEEL YOUNG/ヤング・レディース、コメディ?
・『かぐや様は告らせたい』(21)/週刊ヤングジャンプ/ラブコメ、ギャグ
・『ダーウィン事変』(2)/月刊アフタヌーン/SF?
・『青野君に触りたいから死にたい』(7)/月刊アフタヌーン/恋愛、ホラー
・『ダンジョン飯』(10)/ハルタ/ハイファンタジー、グルメ漫画
・『あなたはブンちゃんの恋』(2)/月刊モーニングtwo/恋愛
・『3月のライオン』(15)/ヤングアニマル/青春、将棋
・『波よ聞いてくれ』(8)/月刊アフタヌーン/青年漫画、ラジオ
・『ベアゲルター』(5)/月刊少年シリウス/アクション
・『九龍ジェネリックロマンス』(4)/週刊ヤングジャンプ/恋愛、SF
・『ニューヨークで考え中』(3)/あき地(Web)/エッセイ
・『メイドインアビス』(9)/WEBコミックガンマ/ダークファンタジー
・『バーナード嬢曰く。』(5)/月刊ComicREX/ギャグ、読書
・『よつばと!』(15)/月刊コミック電撃大王/コメディ・ホームドラマ
・『山を渡る』(3)/ハルタ/登山
・『フールナイト』(1)/ビッグコミックスペリオール/SF
・『映像研には手を出すな!』(5)/スピリッツ/アニメ、群像劇?
・『ブランクスペース』(1)/ふらっとヒーローズ(Web)/SF

※ジャンルはwikipediaより。作品単位でない場合は掲載誌のジャンルなど

思いつくままに羅列すると分かりにくいので、まとめるとこうなる。

キャプチャ

掲載誌についてはアフタヌーンとハルタが特に多い他は、思った以上のばらけ具合。週刊で購読するのはジャンプじゃなくてアフタヌーンにした方がいいんじゃないかという風には見える。が、ジャンプでは、単行本は買っていないけれど読んでいるものが多いので(少し前は『鬼滅の刃』や『ハイキュー!』、今は『呪術廻戦』などなど)これがちょうどよかったり。

ジャンルに関しては、思ったよりSFが少ないなぁという印象。SFブームが去ったというのはあるけれど、『AKIRA』や『攻殻機動隊』など名作がたくさんある分野だけに、もうちょっと探してみてもいいかな。反対に多かったのが恋愛。映画でも小説でも、恋愛ものが苦手なので意外だった。

そもそも一つのジャンルに収まるような漫画は少ないので、恋愛一辺倒ってものはあまりない。だから分けること自体がちょっとナンセンスな部分もある。というか群像劇ってなに?

あ、スポーツと成人(ようするにエロ)はなかった。たしかに昔からスポーツ漫画にはまったことはあんまりなくて、それは自分でやっていて現実で満たされているからというのもある。アウトドアジャンルと違うのは、スポーツになると勝手に求めるリアリティの水準が高くなって素直にのめりこめないからかもしれない。

既刊の平均は8.7冊。完結済みで持っている漫画の巻数平均が10冊くらいなので、納得。すごく新しいものを探すというよりは、2,3冊出て評判がいいものを当たる習性なので、各雑誌を購読しつつ1巻から作者を支えているファースト・ペンギン的読者層には感謝するばかり。

平均単価を少し抑えめの600円としても、連載中の漫画だけでも17万円。この3倍は完結漫画を持っているとしたら累計で71万円。漫画以外の本はもっとあるとして・・と考えていくと頭が痛くなってきたのでここら辺にしておこう。子供のころからの趣味なんだから安いほうだ、というのは負け惜しみ。

最近追い始めたのは『フールナイト』『ブランクスペース』『女の園の星』あたり。今追っている作品が32、平均1年に2冊出て、10冊完結くらいが多いとすると平均5年で終わっていくわけで、年間6作品くらいは完結するだろう。とすると今のペースで循環していく想定だと、年間6冊くらい新しい作品に出合うわけで。今年も約半年過ぎていて3作品追い始めたという結果を見ると、数字は嘘をつかないものだなとちょっと感心してしまう。

おすすめの漫画は、面白い割には知名度が低そうという独断と偏見で5つ選んでみた。

おすすめ① 『あなたはブンちゃんの恋』(2)

宮崎夏次系、というペンネームは特に意味はないそうで。もともと目についた単語を組み合わせた「夏次 系」を名乗って活動していて、なんとなく出身の宮崎を継ぎ足して今に至るようだ。

そんな作者が生み出す作品のほとんどは、捉えどころのあるような、ないような短編集。検索してもらうと分かるけれど、絵は結構人を選ぶ。一見上手いのか?と首をかしげてしまう絵が、よくわからないストーリー展開と急にカチっと嵌って生々しいほどの説得力を持つ瞬間がなぜかある。なぜか。格好よく言うとセンス・オブ・ワンダー。

あらすじとかはAmazonのリンクを貼っておきますね。

おすすめ② 『チ。-地球の運動について-』(3)

副題からも分かるように、天動説が地動説にアップデートされる間に起こったゴタゴタを題材にした漫画。愚かな古い教会が異端裁判で幾多の人を火にあぶり、2008年まで地動説を公式に認めなかったなど、授業で教えられてきた天動説にまつわる不条理エピソードは様々頭に浮かぶ。けれど、この作品が出色なのは、歴史を追うことではなく、その中で生きて死んだしがない個人たちに焦点を当てていることにある。

歴史ものはどうしても派手さを求めて英雄の手に華を持たせがちだけれど、『チ。』は敢えて不要な正確さや事実の詳細を切って捨てることで、実際に手を汚して歴史を少しづつ動かしてきた個人の想いを現代的なテーマと結びつける。それが、今の英雄でない現代人に響く。

おすすめ③ 『推しの子』(3)

職業モノかつ転生モノ、人気作家同士の原作×作画コラボ、コメディでありつつ社会問題への問題提起をはらんだ、伏線をきれいに回収していくアイドル恋愛成長漫画。すべてを詰め込んだ多様性の化身、現代の漫画を象徴するような作品。

おすすめ④ 『山を渡る』(3)

登山を扱った作品は数あれど、普通の登山者がまっとうに成長していく過程を丁寧に描かせたらこの作品の右に出るものはない。新しいものに出会ってできることが増えていくという普遍的な楽しみをしっかりと描いている。いい意味で、ストレートな漫画。

実際に登山やクライミングに打ち込んでいる僕からしてもリアリティを感じるし、面白さと両方を担保するのはすごいと素直に感心してしまう。
登山漫画と言えばで挙げられがちな『岳』や『孤高の人』も面白いのだけれど、やはり派手さを求めてファンタジー的な描写が散見される。特に映画『岳』はありえないシーン続出で笑ってしまった。伝説のクライマーがゲスト出演しているのに、絵はリアリティ皆無という対比はちょっと面白かったけれど。

面白さに必ずしも深いリアリティは必要ないけれど、現実を舞台にするのであれば、現実にバランスしている整合性を無視して進むとどこかで不気味の谷的閾値を超えて冷めてしまう。細部に宿る神を軽視すると罰が当たるわけ。

昔ニュージーランドにて、大学併設のクライミングウォールで地元の山岳部と知り合う機会があったが、僕が日本から来たと明かすなり“KOKOU-NO-HITO!!”とテンションぶち上げで叫ばれるくらい『孤高の人』は有名なようではある。たしか、金髪ウェーブにメガネをかけたオタクっぽいクライマーで、どこの世界も共通する人物像は存在するらしい。

おすすめ⑤ 『左ききのエレン』(16)

上で「群像劇ってなに?」と書いたが、『左ききのエレン』はまさしく群像劇の筆頭だ。メインの筋は凡才の男主人公と天才の女主人公が、広告代理店とアートの世界で、互いに固有の痛みと喜びをぶつけ合い共感しあうというもの。ダブル主人公のあいだで場面や時系列が行ったり来たりするうちにも、また違った個性と信念を持つキャラクターたちがひっきりなしに登場し、勝手気ままに振る舞う。

ノーベル文学賞受賞者でもある南米作家リョサは、若い小説家希望者からの質問に答えた手紙でこう書いている。

テーマというのは、小説家が選び取るのではなく、テーマが小説を選ぶのです。(中略)経験の中には小説家の心に深く刻み付けられ、それからのがれるためには物語にして語るしかないというものがあります。小説のテーマというのはそうした経験を通して人生が―この言葉が重いものであることはよくわかっています―もたらしてくれるものだという気がします。小説家の証言を見ますと、これこれの物語、人物、状況、プロットが自分の人間性のもっとも奥深いところからでてくる欲求のように自分に迫り、つきまとってきたので、それからのがれるためには書くよりほかに方法がなかった、と語っている点で一致しています。
「若い小説家に宛てた手紙」バルガス=リョサ 木村榮一訳,2000年,新潮社

お世辞にも絵が上手とは言えないかっぴー氏が、苦しみながらも、武蔵野美術大学と広告代理店の経歴を下敷きに描かざるを得なかった。この漫画に生々しい命を吹き込んでいるのは、のっぴきならない切実さであると勝手に確信している。


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