【読書レビュー】米澤穂信「本と鍵の季節」
本を読むとき私は、
最初の一行をもとに
私の中に世界を構築する。
正確には、
私の記憶の中の景色
ーー実際に見たものでも、映画の景色でもいい。
を、総動員して、
本の世界に似た世界を私の中に創り上げる。
この作業がどれだけワクワクするかで、
中身への期待度も変わってくる。
例えば、川端康成の『雪国』だったら。
有名なフレーズですね。
目を瞑ると、
子どもの頃に電車で通った長いトンネルと
トンネルを抜けた時の明るい景色が
鮮明な映像として再生される。
こういう文章を書ける人って
本当に素晴らしいと思う。
そして、こういう文章から始まる本は
総じて面白い。と思っています。
さて、今回読んだのは
米澤穂信『本と鍵の季節』。
集英社文庫から2021年6月に出ている小説です。
上の文章で散々書き出しに触れておいてなんですが、
実はこれ、完全に装丁買いです。
だって綺麗じゃん。
何はともあれ、一行目。
ドキドキしながらページをめくる。
どんな言葉から始まるかというと、
瞬間、私の通っていた高校の、
静かな図書室の風景が思い起こされる。
グラウンドを走る野球部の声と、
空き教室で練習をするトランペットの音色と。
かすかに聞こえる音に囲まれて、
まるで時間を止めたように
本だけが呼吸をしている空間。
私の、この本の舞台は決まった。
さぁ、あとは登場人物たちに動いてもらうだけ。
登場するのはこの二人。そして、
とのことです。
いざ没入。
本日(2022/07/14)、読了しました!
中盤〜ラストの疾走感がすごい。
ページをめくる手が止まらない感覚を久しぶりに味わいました。
とりあえず伏線の量が半端じゃないことにはツッコんでおきたい。とても面白く読める作品です。
何がネタバレになるか分からないので、内容についてはご自身の目で確かめてみてください。
この夏に出会えてよかった。