明晰夢 | 夢日記
夢日記は小学生の頃からつけていた。
当時はスマホを持っていなかったから、B5の紙でノートを自作した。暫くそのノートを使っていた。
頻度はそこまで多くなかったし、内容も1,2行だった。結局ノートは4ページくらいしか埋まらなかった。
高校生になる数ヶ月前から、スマホのカレンダーアプリに夢の内容を記すようになった。起きて真っ先に手にするスマホに書いた方が楽だし、いつでも見返せる。
これが私に夢の世界を教えてくれた。
書き続けているうちに、夢の記憶はどんどん鮮明になっていった。夢の時間が長くなったように感じた。二度寝をしたら確実に夢を見るようになった。
徐々に「これは夢かも」と気づける頻度が増えていった。
夢の世界は、思い通りになりそうで意外とそうでもない。よく「好きな人や推しに会えるじゃん!いいな!」と言われたが、私の好きな人たちはそう簡単には出てきてくれない。夢の中で必死で探し回って漸く会える時もあれば、会えないまま終わってしまう時もある。
夢だと気づいたのに、途中でそれを忘れてしまって気がつくと悪夢になっていることもある。
「空からお金が降ってきたらいいな」みたいな願いは叶ってくれないのに、「今後ろを振り返ったら嫌な感じがする」と思った時には、髪が長くて白い服の女が今にも追いかけてきそうだった。お金が降ってきても夢の中でしか使えないのだけれど。
木の棒を刀にしたり、スプーンをフォークにしたり、着ている服のデザインを変えることはできた。といっても、必死に作りたいものをイメージし続けたら何とかできる感じ。100%期待通りのものができるとは限らなかったし、何度も試すと夢から醒めてしまう。
それに、無から何かを作り出すことはもっと難しくてほとんどできない。天使の羽はのぞいて。手にのせられるくらいの小さなものならともかく、大きなものは全くできない。修行が足りないのかもしれない。
そこにないものをイメージによって具現化する。まるで領域みたいだ、と思った。呪術廻戦の話である。
ある時、起きてすぐに日記をつけようしたら、上手くできなかった。何度もキーボードを叩くのに、思ったように打ち込めない。何度試しても同じ文字ばかりが入力されてイライラする。
そのうち目が醒めて「あ、これも夢だったのか」と思う。
これが日に日に増えていった。
夢から醒めたい時はいつも「起きろ!」と心の中で念じていた。それが徐々に「自分の寝室で目が覚める夢」になった。起きたくても起きられない。夢の世界に閉じ込められることが増えた。
小学生向けの少女漫画雑誌で同じような展開をみたことがある。あれはホラー漫画だった。
暫くして、夢から醒めたはずなのに、なぜか身体が動かせない夢を見るようになった。手を動かしているつもりなのに、視界に映る自分は身動きひとつしていない。
そういう夢だと思っていた。ホテルの客室みたいな、自分の寝室以外の場所寝ている時に、動けない私がいるのは寝室ではなくその場所だった。
夢じゃないのだと気づいた。
金縛りのようなもの、というか金縛りそのものかもしれない。幽霊とかそういう話ではなく、起きた時の脳の状態によるものだろう。あまり詳しくはわかっていない。怖いものは怖い。
夢日記をつけるのをやめた。3年ほど前の話だ。
やめても夢は見たし、閉じ込められることもあった。でもその機会は確実に減ったと思う。
夢に閉じ込められることは、徐々に慣れた。そのうち目覚めるから、慌てるのは無意味と知ったというべきか。学習性無力感の賜物である。
他にも夢の中でのマイルールがいくつかできた。その話は今度しようと思う。
最近再び夢日記をつけるようになった。後から思い出した時や気が向いた時だけだが。
夢の時間を全て思うように使えたら、人より自由な時間が増えるのではないかと期待している。時々眠るのが怖くなることもあるが、それでも私は夢が好きだ。