偶然で必然の出会い
ロンドン生活開始にあたり最初の難関が新居探しと覚悟していたのだけれど、偶然にも同じタイミングで退去が決まった物件を回してもらえることになり、会社指定の仮住まい(サービスアパートメント)を1週間で卒業できることになった(会社史上最短での卒業かも!)。
仮住まいからEalingの新居までは電車で1時間程度。
当座の服やら生活用品を詰め込んだ100リットルのスーツケース3つを一人でどう運ぶか思案していたところ、同僚からAddison Leeという運搬サービスを教えてもらい、配車予約しておいた(これで安心安心)。
当日朝、Addison Leeの運転手さんがフロントに現れ荷物を預ける際に初めて、私が予約したのはCourierで荷物運搬用、私は運んでくれないということが分かった。
彼も「あー、君勘違いしてるね。僕は荷物は運ぶけどタクシーじゃないよ」と。
私が電車で移動すると多分受取りが間に合わない、どーしよう、と話してると、
「わかった、君も困るだろうし一緒に乗せるよ、でもうちの会社には内緒にしといて」、
「あといくつか途中で配達あるから寄り道してくけどよい?」と。
彼が荷物の受取り・受渡しというのを繰り返しながらの1時間のロードムービーのはじまりはじまり。。。
ブラジル人の奥さんとの間に14歳の娘と9歳の息子がいること。
奥さんと出会った当時はお互い英語・ポルトガル語しかしゃべれず意思疎通に努力したこと(だから私との会話もこんなに通じあえたのかな)
娘はギターやピアノが上手で、親としては勉強と音楽は両立してほしいけど、彼女は音楽への情熱が勝ってること。
彼自身はビル建設用の鉄鋼業界で働いてたけど、リセッションで会社がダメになり今の配達の仕事を始めたこと。
給料は減ったけど、時間の自由が効き下の子供の呼び出しにもすぐ対応できるしこれはこれで気に入ってること。
ここまで物価が上がる前にSurreyで一軒家が持ててラッキーだったこと。
日曜日は配達しながら娘とドライブするのが楽しいよ、ビートルズの聖地を回ったりするんだ。
サッカーは自分はマンチェスターUで娘はリバプールファン。初めて見るならアーセナルがいいよ。マンUは今年はよくない、スペイン人の監督が苦労してる。
日本にはとても興味あるんだ。娘もマンガが好きでよく見てるよ。
漢字には意味があると聞いたんだけど少し教えてほしい、と言うので、
「例えば森という漢字は3本の木から成っていて、そもそも木という字も木の様相を表しているんだ」と話すと、
「おーすごい。じゃぁ例えば海、Sea/Oceanはどうだい?」と言うので、
「海はそうだなー、左側は水を意味していて、右側は母という字かなあ」と話すと
「Oh ! Mother of Nature!なんて神秘的なんだ」と目をキラキラさせて感動してくれた。私こそ「海の成立ちに気づかせてくれてありがとう!」と。
新居横に車が到着し、
「本当にありがとう、とても助かったし楽しかった。これは少し私の気持ちだから受け取ってほしい」と少しばかりのお礼を渡そうとすると、
「おー、そんな気を遣わなくていいんだよ。でもありがとう。そうだ、明日は母の日だから、これで母に花を買って帰るよ」といい、
助手席のダッシュボードからカラフルな母の日カードを取り出し、
「ほら、明日母に会いに行くんだ」。
海という漢字がMother of Natureだということ、
明日3月10日が母の日だということ、
私の勘違いから始まったこの偶然の出会いから、家族と母を想う気持ちが重なったこと。
偶然で必然の出会いへの感謝から始まった、ロンドン新生活の幕開け。
街でAddison Leeの、黒に黄色字の車を見るたびに、
この出会いと出来事を思い出している。
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