中学生になってからの勉強ギャップ(中1ギャップ)について考えてみる


01. 小学生で起こっていることは

塾屋ですが、ここがわからないんです。いろいろな数字やデータを集めてたくさん分析してもわかるようでわからない。メンタルの部分もあるし様々な要素が絡み合ってくるので一概には言えない部分です。

ある中学入試の大家(と呼ばれている人)に言わせれば、「開成など一部の超トップレベルになると専用の算数対策が必要になるが、それ以外は原則国語力で決まる」と・・・賛否両論ありましょうが、私は概ね同意します。

例えば、(四谷大塚~東進主催の)全国統一テスト(は本当のトップレベルの子どもたちは受験しないテストということで有名らしいですが)、地方の子どもが受験できる高いレベルの模試という意味では数少ない選択肢になる訳ですが、全国統一テストと学校で扱われるテストや問題との違いは「情報量」だと思っています。
国語であれば定められた時間で読解する文章が長い(文字数が多い)こと。もちろん初見の文章である、ということも学校のテストとの違いですね。加えて国語も算数も問題の指示が長い。例えばですが「〇〇である場合に、△△は◇◇である。それでは、◆◆が▽▽の場合、××はどうなるか。」みたいな感じですかね。
ということで、科目に関わらずそういった多くの情報量について定められた時間で処理をして、記載されている内容を把握して、かつ指示内容も正確に把握することがまずはスタートである、という意味で「国語で決まる」というのは正しいと思います。

それでは、やや強引な気もしますが「国語」の中でもわかりやすいところ(数値化しやすいところ)で「漢字」を基準に1つ考えてみましょう。

02. 漢字、大事。

さて、小学校6年間で習う漢字は何個でしょうか。
 ↓
 ↓
 ↓
こんなふうにたくさんスクロールさせるとうっとうしいのですぐに答えを書きます。
 ↓
 ↓
 ↓
6年間で習う漢字は「約1,000」です。

これを多いと感じるかどうかは置いておきましょう。6年間で1,000ですから、小学1年で80、小学2年で160、以降は年間約200の漢字を習います。塾屋の印象は「1,000の漢字、読めるが書けない生徒がたくさん隠れている」です。この隠れてしまっている「書けない漢字」のような、知識として頭に入っていない(もしくは入っているように見せかけて曖昧な状態になっている)ものが表面化するのが中学生になってから、中学生の定期テストで数字に表されてから、だと思っています。

実際、私が在住している県の公立高校入試において取り扱われる漢字の問題は毎年決まって10問・・・読み取り5問の書き取り5問ですが、実は書き取りの問題は小学校レベルがほとんど・・・中学で習う漢字の書き取りは高校入試でほぼ出題されないのです。それでも書き取りの正答率は平均すると6割程度、3~4割の生徒が「小学校で習った1,000の漢字を読めるけど書けないまま中学3年生になっている」ということになります。

忘れてしまっているものもあるかもしれませんが、当時から実はちゃんと覚えていない、というものが多いのではないでしょうか。いずれにせよ、そういう「曖昧な覚え方が後々にテストの点数の差となって響いてくる」。その元となっているのが小学生で習う国語以外の科目も含めた基本的な知識の数々であると考えています。
「漢字力=国語力」とは言い切れませんが、書けなければ意味がありませんし、言葉の正しい意味を正確にとらえていなければ、読解も表現もできないでしょう。そのように考えると、某中学受験の大家がおっしゃっている「まずは国語力が大切」というのも理解ができます。

03. 中学生の学習を漢字・英単語基準で考えてみる

覚える量で考えてみましょう。中学生になって習う漢字は「1,000」です。つまり、小中の9年間で「2,000」の漢字を習います。
小学生のうちは6年間で1,000でしたが、中学生になると3年間で1,000ですので、年間ペースでいえば「倍の量」を覚えなければならないことになります。加えて中学生になると英単語を3年間で1,600ほど習いますし、社会でも理科でも小学生の段階とは比較にならないほどの知識量が入ってきます。

中学での学習の中心となるのは国語・数学・英語・社会・理科の5科目ですが、そのうちの国語・英語の2科目だけみても、覚えなければならない言葉(漢字と英単語)が2,600もあるのです。そこに社会(地理・歴史・公民)と理科の言葉と知識が入ってきます。そりゃもう大変ですよ。何せ、小学校6年間で習った言葉と知識が十分に身についている子供は実はほとんどいないにも関わらず、その上にさらに知識を乗せようとするわけですから。土台がすっからかんの家なんて想像するだけで恐ろしい、まともに起立することはできないに決まっています。

その意味で、中学生になった時点で、目に見えない知識不足が(たくさん)ある。まずその部分の点検をしっかりとやっておくとよいと思います。親子で一緒に漢字練習するとか。もちろん学年が上がれば上がるほど算数の力はもっともっと大切(学力差のもとになりやすい)なのですが、いったん基準は漢字で良いのではないかと思います。本当は毎年のように、その年にならった漢字が本当に身についているか(読んで書ける)を毎年のように過程でチェックしてあげられるのが理想なのですけれどもね。

04. 中1の最初の定期テストはたちが悪い

ここまで触れた通り、中学生になった段階でいろいろと足りていない子供たちは多いです。本当に多いです。でも?だからこそ?見出しの通り「5~6月に実施される定期テストはたちが悪い」です。なぜなら「死ぬほど簡単だから」です。

あまりにも簡単すぎて、将来的に=3年後に定期テストの5科目合計で400点に届かなくなってしまう生徒も、3年後も続けて定期テストで480点490点を取り続けるような生徒も、400点~500点という高得点帯にぐちゃっと入り込むような形になります。
繰り返しますが、あまりにも簡単なのでその生徒の真の知識量を計ることができないのです。実際、塾屋の経験値・データとしては、中1の最初の定期テストから1年くらい経過すると少なくとも合計点数は50点、ひどい場合で100点ほど下がります。最初のテストで450点とった生徒が中1のおしまいから中2にかけてどうやっても400点取ることができない状態になるのが「普通」です。塾に通ってもらっていても30点から50点は下がります。下がらずに維持できるのは、小学生段階での知識を相応にしっかりと身に付けることができている生徒、言い換えるとその子供にとっての学習習慣が最低限しっかりと身についている生徒と言えます。・・・大切なことを忘れていました、小学校での内容が身についているのに加えて、学習習慣がしっかりと身についていることも大切ですね。

でも、最初はあまりにも簡単なのでみんな、本当にみんなが「勘違い」をするんですね。「いけてる」と。そして、そのまま「夏休み」に突入するのです・・・その期間にまたさらに習った知識が曖昧にあやふやになっていくとも知らずに・・・。夏休み明けの定期テストは覚悟が必要ですよ。そこでの点数減がほぼそのまま3年間影響し続けますから。

05. まとめると(追記)

小学生で学んだ知識を小学生のうちにしっかりと身に付けておく。これ大切です。今回は数値化しやすいところで「漢字」をベースにしましたが、算数の視点もどこかで触れたいと思います。言わずもがな、算数はもっと大切ですからね。

で、中学生になってからの落とし穴をしっかりと認識して・・・親だけが空回りしてもいけませんから、親と子で認識を共有して適切な目標を定めて・・・落とし穴を回避する努力を重ねていく。これが超大切。

  • 小学生のうちに知識・考え方を定着させる

  • 中学生に入って最初の定期テストとの向き合い方を整える

  • 中学生の最初の定期テストの結果を正しく受けとめる

  • 正しく受け止めたうえで夏休みの過ごし方を定める(小学生内容も含めて復習・定着を図る最後のチャンス)

  • 夏休みの過ごし方は夏休み明けの定期テストを見据えたものとする

こんな感じでしょうか。もし、最初の定期テストで良い結果を出せた方、具体的には(学校にもよりますが、一般的な地方の公立中学校においては)、470点以上取得できた方は、夏休みに先取りを始めても良いかもしれませんね。470点に満たない場合は、焦らず、定着漏れがないことを確認しながら夏休み明けの定期テストでいかに点数を維持するか、を考えるのが良さそうです。

(2024/2 追記)
もう1つ付け加えると、最初の定期テストで400点を超える点数を取った場合、多くは「大丈夫」と判断してそのままになりますが、特に地方の公立中学校に通われているお子さんの場合、中1の夏休みに塾に通って力試しをしてもらいたいです。中には頑なに「ノー塾で」とか「塾なしで」とかいう信念を持っていらっしゃる方もいますが、夏休みに塾に通って、塾の難易度においても問題なく対応できれば一安心という目安にはなると思うので、ぜひそんな視点も持ってもらいたいです。
「塾なし」と宣言している方が、ネットのどこの誰が回答を付けるかわからないような掲示板やQ&Aサイトで学習のことなどを質問しているのを見ると不安になってしまいます。そんなに気になることがあるのであれば(経済的に問題がないのであれば)普通に塾をうまく使ってくれればいいのになぁと思うんですけどね。目的と手段を違わなければよいのではないかと。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?