#152 学習効果とは何か(4)学習効果の存在は生産を促す
学習は、埋没費用(sunk cost)をともなう一種の投資行為である。
当期の生産実行は,二面の効果をもたらし得る。
①即時的な利潤の拡大化をもたらし得る効果
②累積産出量の増加を通じた将来費用の低減化をもたらし得る効果
このとき,学習は埋没費用をともなう一種の投資行為であると考えられる。任意時点の生産費用が累積産出量の減少関数となるところで,両者の関係は学習曲線(learning curve)を導く。
(1)まず,累積産出量が企業価値にもたらす限界的効果を累積産出量の「陰の価値」と特定すれば,生産が実行されるときの「陰の価値」が生産物価格に依存し,その価格の上昇には陰の価値の上昇が対応することが確定的経済環境の下で確かめられる。
(2)次に,生産物価格あるいは限界費用がそれぞれの確率過程にしたがう確率変数となるとき,生産が実行されるところで限界費用が「陰の価値」分だけ限界収入を上回る点で生産水準が選択されるが,「陰の価値」は,生産物価格の上昇には上昇し,限界費用の上昇には低下すべく対応する。
(3)さらに,生産物価格と限界費用が同時に確率変数として作動するとき,累積産出量がもはや学習効果を生まない程の高水準にあるところで,企業価値は生産物価格と限界費用のみに依存する。
このとき,両確率変数の共分散の上昇には価格-限界費用比率の不確実性の低下が対応し,むしろ生産を実行する誘因が上昇する。