イノベーションとは最新技術のことではない
イノベーションというと最先端の技術革新によって成し遂げるものといったイメージがあります。
スタートアップの世界でも、「なんとかテック」とか「なんとかDX」みたいな言葉が大流行りです。しかし、「イノベーション=最先端技術」というイメージは間違いで、最先端技術はイノベーションの引き金の一つでしかありません。
経営学者のP.F.ドラッカーは、イノベーションについて「すでに存在するものを、はるかに生産的な新しい一つの全体にまとめるために欠落した小さな部品を見つけ、その提供に成功すること」と述べています。
この定義にはどこにも最先端技術という言葉はありません。技術はイノベーションの目的ではなく手段に過ぎないのです。
イノベーションとは新しい価値の創造です。新しい価値を生み出し、それが人々に受け入れられることがイノベーションなのです。
価値とは問題(困りごと)や課題(こうなったらいいなと思うこと)を解決することで生まれます。問題や課題を見つけ、それを解決するためにすでにあるものを組み合わせることがイノベーションの基本になります。最先端技術は必ずしも必要ではありません。
例えば、ペットボトル茶は伊藤園が生み出したイノベーションです。日本茶は数百年前から存在していました。しかし、それは急須で入れて飲むのが当たり前の飲み物でした。
伊藤園は、「日本茶はコーヒーや紅茶と同じタイプの嗜好品だ。缶コーヒーや缶紅茶があるのにどうして日本茶にはないのか?」と考え、10年以上の試行錯誤によって人々の物の見方を変え、お茶の消費のあり方を変えたのです。
日本茶や缶コーヒーは元々あったものですが、それを組み合わせることを思いつき、実行した人はいなかったのです。
最新技術に気を取られていると、新しい価値が人々の物の見方の変化で生じるものであり、人々の行動を変えるものである点が忘れられるように思います。