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里山と友に生きる。トキエばあちゃんの日常。

 広大な筑後平野に悠々と流れる筑後川と、遠くに連なる耳納連山が魅力の自然環境に恵まれたまち。福岡県うきは市。

 ここに、地域に愛されるおばあちゃんがいる。トキエばあちゃん。

 そんなトキエばあちゃんの日常について「100ッピーインタビュー」

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トキエばあちゃん / 福岡県うきは市
里山体験「國武庵」 女将

うきは生まれ。うきは育ち。5人兄妹の末っ子。
國武家に嫁ぎ、果樹園を営みながら里山での生活を送る。
子育てがひと段落した40代半ば、自宅周辺を自分たちで改修し、里山体験「國武庵」を開始する。
その後、現在まで25年に渡り、里山での暮らしを体感してもらいながら、自然の素晴らしさ、厳しさ、大切さ、そして田舎の抱える様々な問題を伝えている。

<座右の銘>
福澤諭吉 心訓七則
一、世の中で一番楽しく立派な事は、一生涯を貫く仕事を持つという事です。
一、世の中で一番みじめな事は、人間として教養のない事です。
一、世の中で一番さびしい事は、する仕事のない事です。
一、世の中で一番みにくい事は、他人の生活をうらやむ事です。
一、世の中で一番尊い事は、人の為に奉仕して決して恩にきせない事です。一、世の中で一番美しい事は、全ての物に愛情を持つ事です。
一、世の中で一番悲しい事は、うそをつく事です。

里山体験を始めたきっかけ

 『始める前から、地元を離れた高校の同級生たちが家に来たり、成人した長男も都会の友人を連れてきよってね。土日は我が家に多くの人たちが訪ねてきよった。タケノコ掘りや山菜採りを一緒に楽しむと「みんな、楽しかぁ〜」って口を揃えて言うてね。そん時に、「都会の人はこんなに自然に触れたがっているとやねぇ。」と思いました。』

 ちょうどその頃、農水省が全国グリーンツーリズム支援事業をスタートする。そして九州では唯一、トキエばあちゃんが住む浮羽町(旧浮羽郡浮羽町)がモデル地区に選ばれることに。

 『子育てもひと段落しとったし、時間的にも余裕ができたから、グルーンツーリズムのイベントに参加してみました。すると、うちでやってるのと「なぁ〜んも変わらん」と思ってねぇ。それから次の年にツーリズム大学で学びながら、自宅の離れや周囲を手作業で改造して始めてみました。』

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体験を通して伝えたいこと

 『この辺は竹がいっぱいやろ。竹害っち知っとるね。竹は成長が早いから手入れせんと、どんどん広がっていくと。それとイノシシがタケノコが好きやろが。だから、イノシシが降りてきて畑も荒らすとたい。』

 竹を放置すると、太陽の光を遮ったり、地盤が弱まることで土砂崩れのリスク、また放置竹林が里山の植生をも変えてしまうなど、いくつもの課題があるという。また意外と知られていないのが、イノシシのすみかになってしまうこと。

(平成29年度は4億7700万円以上。「平成29年度 野生鳥獣による農作物被害調査結果の概要(熊本県) 」による)

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 『田舎に住む人とのふれ合いから、自然の素晴らしさ、厳しさ、大切さを、体感してもらって、そして田舎の抱える様々な問題も一緒に考えてくれる機会になればと思ってねぇ。農業や田舎、山林や棚田が、自然環境国土保全に、そして全ての生き物に係わっている事をしっかり認識、理解してほしかと。』

 手探りで始めた里山体験だが、みんなの喜ぶ顔を見て続けていく自信が湧いてきたという。

 トキエばあちゃんの里山体験「國武庵」は評判を呼び、様々な取材を受けることになる。そしてテレビ局が主催する”九州の女”のひとりとして掲載される。

 『ありのままの生活の中で都会の人との交流を楽しんどります。自然の中でこそ人間としての心が育つことを確信しとるけんね。』

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習慣的に行っているもの

 『朝はだいたい畑仕事をして過ごしとります。夏場は暑かけん、8時くらいまでには終わるように早起きして。今は少し涼しくなったけん、7時に起きてから、ゆっくりテレビとか見た後に畑に行きよるよ。』

 畑まで連れて行ってもらったが、その道中は強烈な坂道が30メートルほど続く。その先にトキエばあちゃんの畑が見えてくる。

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 『昔はここよりもっと奥の方に畑があったとよ。年貢で米を取られるから、みんな予備のために奥で隠れて畑をしよったね。』

 『健康のために意識してるのは、体を動かすこと。少し無理な畑仕事をした時は特にストレッチをすることを心がけてやっとります。昔は腰が痛くなることもよくあった。今はよくストレッチをやって身体のメンテナンスを心がけているので、大丈夫になったね。それと「水戸黄門体操」をしよるね』

図1

トキエばあちゃんの考え方

 『食事はいろいろ言ってくる人おるけど、難しいことは考えんでよか。自分の周りのもの、自分が住んでいる土地でできた旬のものが一番体に合う。昔ながらのその土地の料理を食することが一番大切。それと良質なタンパク質を摂ることは大事ね。それは心がけとるね。特に鶏肉の柔らかいところを食べよります。』

 戦後に栄養失調の子供をなくそうとスタートした食生活改善推進会。この活動を長年行っているトキエばあちゃんは食育に対する知識も豊富。現在は、地域の公民館より依頼を受け、公民館だよりへ毎月秘伝のレシピを提供している。

 『地域の行事とか、PTAとか地域の役員とかあるでしょ。それは率先してやりよったね。他の方は、忙しいと言って断りよったけど、忙しいという漢字は「心に亡びる」と書く。忙しいと言って何もしよらんと、みんなダメになる。私は昔から農業しよったから、自分で時間を作ることができた。だから時間を作って役員ごとをやりよったね。今も民生委員、食生活改善推進員や社協主催のボランティアのハッピー会に参加しとります。月1回料理を地域の公民館で振舞ったりもしよるね。』

 『ボランティアも長年やりよるけど、人の為と書いて「偽」と呼ぶ。自分だけが満足しているボランティアは何もならん。お相手の方が助かったと思ってもらえることが大切。してあげているという精神ではダメね。それと、人の話を聞くというのが大事。私以外はみんな先生だと思ってる。子供でも私の知らないことをいっぱい知っとるよ。子供たちから学ぶことも多かとよ。』

図3

 10月からは、タケノコ堀りなどの体験も再開予定。

 また、うきは市内の若者農家とコラボし、うきは市を盛り上げようと、「うきは農園」に参加。野菜セットの販売を新たにスタートさせている。

里山体験「國武庵」
場所:福岡県うきは市浮羽町妹川2708
問合せ先:0943-77-3481

 トキエばあちゃんも一緒に「みんなで100ッピー体操」



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