20240718 oboe

オーボエの音色が好きだ。

と言うのも、今朝河川敷を走っている時にオーボエの音色がどこからともなく聴こえてきたからだ。

どうやら、川沿いの土手に続く階段の中段付近で、一人の女性が楽譜を眺めながらオーボエを奏でている。

少し距離があるのでよく見えないが、歳は20代から30代のように見える。きつい日差しを防ぐように薄いピンク色のキャップを被り、そのキャップの後ろから束ねた髪が元気よく飛び出している。

太陽が反射してきらりと光るキイを巧みに操りながら、何度も何度も同じフレーズを繰り返し奏でている。そのフレーズはとても短く一小節分だけだ。丁寧にその短いフレーズを何度も繰り返している。

ご存知の通り、ブラームスのヴァイオリンコンチェルト第二楽章はオーボエの美しいソロから始まる。途中からメインのヴァイオリンが入ってきて協奏していく様は、まるで目の前を流れる川のように、山から降りてきた川が大河に溶け合っていく美しさがある。だが美しさとは常に哀しみが伴うものだ。

遠い山の端を眺めながら走っていると、遠い哀しみが静かにやってくるのが聴こえてきた。


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