HONZ終了によせて

ノンフィクションレビューサイトHONZが本日(7月15日)をもって更新を終了。成毛眞が立ち上げた日本最大のノンフィクション書評サイトだった。僕(冬木糸一)は2015年から現編集長の内藤順さんにスカウトいただき書いていたけれど、中の人はみな暖かく興味もバラけていて、幅広い視点からノンフィクションを取り上げていてたいへんたのしかった。

終了に特に大きな理由はなく(喧嘩とか内輪もめとか収益性の悪化とか)、記事中にもあるように続けていくこともできただろうけれど、書き手のライフステージもモチベーションも変化し、ウェブメディアというものを取り巻く状況も変化し、メディアとしてこの後ゆるやかに衰退していくのであれば一度キレイに終わらせたほうが良いのではないか、といったあたりなのかなと。実際、こうやってキレイにピリオドを打つことで思い出話に花を咲かせることもできるわけで、個人的にはいいなと思う。

HONZは僕にとってはノンフィクションの書評をする人間として広く認知してもらえた場であり、同時にライターとして特に何の後ろ盾もコミュニティも持っていない僕としては唯一持てていた「ライターの立場として所属できるグループ」であり、「書くうえでの悩みや迷いごとを相談できる人たち」が得られたのが、今思ってもとても大きい。いまだに僕にとっては「書く親しい仲間」といえばHONZの人たちしかいないのだ。HONZが解散しても中の人たちのコミュニティとしては存続し、今後もまだまだ集まる(盛大な解散宴会旅行も企画されている)予定なので、僕としてはありがたいかぎりである。

書評サイトとして見た時のHONZの特徴は「複数人の書評家というわけでもない多様な背景を持った人たちが集まって書き寄るサイト」という点にある。通常このように複数人が集まって、原稿料や依頼のような関係もなしに継続的にメディアを運営するのは難しいはずなのだけど、それが13年もの間特に破綻なく続いたのはやはり最初に仕組みを設計してメンバーを集めた成毛さんや東さんたち、及び初期メンバーの凄さ、それから中期から後期にかけては維持に努めた東さんと内藤さんの凄さだったのかな。このようなコミュニティを運営し続けること、そのコツやテクニックのようなものがあるんだというのがよくわかったし、それは簡単にできるようなことではない。

僕は引き続きブログ「基本読書」でノンフィクションの書評も書いていくし、運営16年目を迎えた今もまったく終了する予定も気配もないので、時々川に散歩に行くぐらいの頻度でよいから読みに来てくれると。

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