もう一度小説を書きたい

小さい頃から本読むのが好きな人は、絶対一度は作家にあこがれて自分で小説を書いているはずだ。


もちろん私もその道から外れることなく、高校生の頃まではいろいろと小説を書き連ねていた。


ちょっと人とは違うのは、部活動の一つとしてやっていたということ。

中高と文芸部に所属していて、そこでは年1冊部誌を発行していた。
部員が書いた小説だったり詩だったり、みんなで作ったリレー小説だったりを載せて部誌を作り、文化祭でみんなで売る。

私の青春の宝物のような思い出。



そうはいっても楽しかっただけかといえばそうでもない。

文芸部なんて当然弱小部だから部員が少ない。1冊発行するには最低限必要なページ数が決まっていて、それを埋めるために必死になって何かを絞り出さないといけない。

日々締め切りに追われて、何か書けるネタないか探して、ちょっとでも思いついたらメモする。

メモしたネタを見て、ガラケーでぽちぽちと書きためる。

よく通学中の電車の中でぽちぽちと必死に打ち込んでいたものだ。

ショートショートにも満たないような長さのものだけど、なんだかんだ月に一個くらいは何かしら書いていたと思う。



部活引退前の最後の部誌で、私は自分の今までの作品の中では一番出来が良いと思える小説を書いて載せた。

自分が考えられるネタの中では最良のもので、あこがれの先輩たちの小説をちょっとずつオマージュして、内容は自分の大好きなファンタジーもの。

自己満足の世界だけど、私文芸部入ってよかったって思えるようなそんな作品だった。


でも困ったことに、それを載せた部誌を発行して以来、なんのネタも思いつかなくなった。

部活引退してからは締め切りに追われることなんて勿論なくなるから、別に困ることはない。

でも、ネタの一つも思いつかないなら小説を書こうと思うこともなくなる。


だから私にとっては高校最後の部誌に載せたあの小説が最後の作品になってしまっった。


高校卒業して10年が近づいてきた。

年を重ねることはきっと想像力が枯渇すること。

意味もなくいろんな空想を重ねてネタを考えられた中高生の頃からはだいぶ大人になってしまった。


でもあの頃の何かを生み出す楽しさは鮮明に記憶されている。


あの頃書いていたものだって、今になって読み返せるようなレベルのものじゃない自己満足のための小説だった。


だから大人になった今、誰に読んでもらうためでもなく、自分が何かを生み出す楽しさを味わうために、もう一度小説を書いてみたいと思う。

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