柴田元幸先生の思い出
大学入学前に『ナイン・インタビューズ』(指摘するまでもないがサリンジャーの短編集のもじり)や『ハイブ・リット』(最初に読んだ時から今に至るまでこの題名は好きになれない)を読んでいて柴田先生のことは認識していた。これら2冊の本には感銘を受けたし、今でも心に残っている。
柴田先生が退官される少し前、元指導学生で芥川賞作家の小野正嗣さんが講演をして(どうでもいいことだがこの講演にはCereal Killerというくだらない洒落の書かれたTシャツを着て行ったことをなぜか今も覚えている)、その講演を「柴田先生、大好きです」と言って締めくくったことが記憶に残っている。
柴田先生は素晴らしい人だった。とはいえ掛け値なしに「大好きです」とは到底いえなかった。もちろんこれは自分自身の問題であって、どんな素晴らしい人物であっても掛け値なしに尊敬や敬愛をすることができない。これはどうしてもできない。今までも一度もできなかったし、これからもできることはないだろう。
とはいえ、「先生」という言葉を聞いて真っ際に思い浮かべるのは柴田先生のことではある。これは一生変わらないだろう。