教育について(1/3): アメリカの大学進学費用
当人の知人でアメリカ在住の人は子供の大学進学で散々な目に遭ったそうです。彼の子供は住んでいる州の州立大学で学生寮に入ったのですが、一年間の学費+生活費が約$40,000、簡単のため$1〜150円で計算すると、なんと600万円ほどだったと言うのです。一年間でですよ、それも公立大学で! 尚、これ以降、諸費用は極大ざっぱに円換算してありますのでご了承下さい。
この話がきっかけで当人も教育のことを考える気になったので、三回に分けて書き綴ってみます。
プリンストン、MIT、ハーバード、スタンフォード、エール、カルテック、デューク、ジョンズホプキンス、ノースウェスタン、ペンシルベニア、コーネル、シカゴ、ブラウン、コロンビア、ダートマス、UCLA、UCバークレー、ライス、ノートルダム、バンダービルド
これは、U.S. News & World Report 2024年版に載っているアメリカ有名大学のランキング、上位20校のリストです。アメリカの大学入試は総合評価のため、共通テストの比較だけではランキングが出来ないため、色々な組織が勝手に基準を決めて公表しているようです。これも、単にその内の一つです。それに、アメリカの大学は各々の学部学科に強い特徴があり、大学全体としてのランキングと学部学科の評価は全く違うことも普通のようです。
さて、ここで驚くべきことは、大学に必要な費用です。まず、上のリストの中で公立校はカリフォルニア州立のUCLAとUCバークレーのみです。ごく一般的な州立大学の州内居住者の学費は約300万円相当です。非居住者は約$600万円相当です。それに対し、有名私立大学では簡単に900万円ほどもかかります。自宅通学以外の場合は、これに学生寮と食費等の生活費が、大まかに300万円ほど加わります。
つまり、有名私立大学の学生寮に入るとなると、一年間に1,2000万円ほど、四年間で大枚4,800万円ほどもの費用がかかることになります。これは立派な家が建つような額ですよね。そして、子供が二人、三人といたら、一大事に違いありません。
尚、知人が言うには、アメリカでも始めからそうではなかったらしいのです。カリフォルニア大学の居住者学費が無料だったり、その他の州でも極わずかだった時代もあったそうです。それが、どうした訳か、インフレを大幅に超える率で急上昇し、現在に至ったと言っていました。
話によれば、一つには大学でのスポーツに費用がかかり過ぎるという面もあるそうです。大規模校は何万人も収容出来る巨大なスタジアムを持ち、そこでアメフトなど大々的な試合を繰り広げるのです。映画とかに出てきますよね。
いずれにしても、よっぽど裕福で無い限り、大学の出費は頭痛の種で、現実には非常に多くの学生(家庭)が何かしらの経済援助を受けているそうです。中には、返済不要の援助や、校内の仕事や特定のスポーツをすることでの援助、卒業後何十年と払い続けるようなローンとか、色々とあるようです。そして、成績とか功績によるものもあれば、収入などを考慮した必要性に応じたものもあるそうです。
ただ、よく考えてみればおかしな話です。普通の家庭では払えないような高額をふっかけておいて、何やかんやと値下げをする。まぁ、商売、あるいは詐欺ではよくある手でしょうか。それに、訳の分からない奨学金の類、ひょっとして裕福な家庭ほど恩恵を得ているのではとさえ勘ぐります。因みに、アメリカの資産家がいとも簡単に税金逃れをしている実情をみれば、それは根拠のない憶測とも思えません。
さらに、多額の寄付金をして学力もないのに有名私立大学に入ったという例はいくらでもあるようです。当人の率直な印象としては、アメリカの大学がビジネスになっているからには、誰かは知りませんが、学費の異常な増加に伴って相当な利益を得ている人々がいるはずです。
公平・平等という名の基に、不公平・不平等がまかり通っている。そして、それは法律に反している訳ではない。何のことはない、弱者を守るかのように作られた法律それ自体、その根底には強者の権力と資産を守るという真の動機が隠れて、いや、顕著に現れている訳です。
脱線してしまいましたが、話を大学の事に戻します。もし、大学教育がビジネスの商品で、これだけ高価な商品をこぞって買おうとする消費者がいるのだったら、その商品が消費者にとって大変に価値のあるものに違いないと思われます。いや、実際にはそれ程価値がなくても、そう信じているか、信じざるを得ないに違いありません。よく言うではありませんか。高い車ほど評価が良いと。それは、高級車は実際にいい車なのかもしれませんが、もう一つには、大金をはたいたのだから、良くない訳が無いだろうという心理が働いている可能性もあります。
兎に角、この不安定で不安な世の中、日米を問わず、大学ぐらい出ていないととか、有名な大学を出てないとと言った心情は根強いに違いありません。アメリカの大学ビジネス、しっかりとこの点につけ込んでいるようです。
では、これだけ高いお金を払って受けているアメリカの大学教育、いったいそれだけの価値があるのでしょうか? 一般に、アメリカの大学は入るのは簡単だが卒業するのは難しいと言われます。日本とは逆ですね。知人に言わせると、確かに彼の子供は相当な分量の宿題をこなさなければならなかったと言います。そして、かなりの比率で、年一年と学生が脱落していくとも言っていました。卒業するまでには、それなりの勉強はしているはずです。それでも、身になるかどうか分からない教授の授業を聞いて、役に立つかどうか分からない宿題をやるのに、それだけ高額を払う必要があるでしょうか? あるいは、よく言われるように、有名私立大学で培う人脈こそが見返りなのでしょうか?
いずれにしても、アメリカの大学ビジネスは消費者である学生とその家族に、極めて有効なセールスをしていることだけは事実です。どういう仕組みになっているのでしょうか? 当人としては、アメリカの小中高校教育が多大な貢献をしているのではと思うのです。それで、次回はその点について考えてみたいと思います。