【長野県】みんなの力で高校生に留学の機会を! 企業版ふるさと納税 活用事業紹介#5 信州つばさプロジェクト
「企業版ふるさと納税」は企業が寄附を通じて地方公共団体の行う地方創生の取組を応援できるうえ、税制上の優遇措置も受けられる制度です。また、企業は具体的な使い道を指定して寄附することが可能です。
本noteでは、長野県で企業版ふるさと納税の寄附を受け付けている事業について紹介をしていきます。
今回は信州の未来を担う高校生の海外留学を支援する「信州つばさプロジェクト」事業について、長野県教育委員会 学びの改革支援課 卯之原 智也さん(写真右)、井出 洋文さん(写真左)に伺いました!
(聞き手:ライター 筒木愛美)
スタートは高校生が海外留学したくてもできない現実
― 今日は長野県の高校生の海外留学を支援する「信州つばさプロジェクト」について教えてください!
さっそくですが、この事業が始まったきっかけは何だったのでしょうか。
卯之原:信州つばさプロジェクトは、長野県の高校生の留学率の向上を目指すために始まりました。実は長野県の高校生の留学率は1.17%(2017年)と、全国平均を下回っていました。
では、高校生にとって海外留学に対してどのようなハードルがあるのかですが、長野県の高校生に調査をしたところ、「海外留学に行きたくない」と答えた人は約7割。その理由を尋ねると、経済的な負担や言葉の壁、海外に行くこと自体への不安などの声が上がりました。
また、「海外留学に行きたい」と答えた約3割の人たちも、やはり経済的困難により高校在学中の留学を諦めているケースが大半だったんです。
高校生の海外留学には、経済面と不安感、この2つのハードルが存在しています。そこで、この2つをサポートすることで海外留学の経験ができる生徒の数を増やせないかと考え、信州つばさプロジェクトでは留学プログラム提供と留学費用の支援を行っています。
― なるほど。高校生は留学したいという思いがあっても一歩を踏み出すのが大変な状況にあるんですね。
卯之原:そうなんです。しかし、海外留学で「伝えたいことがあるのに伝えられなかった」、「日本での日常が当たり前ではなかった」といった経験をすることは、高校生にとって自分を客観視する機会になったり、意欲的な学習や進路選択につながったりする貴重なきっかけになります。
現代は環境が目まぐるしく変化し、何が正解なのか、何がゴールなのか、予測困難な時代です。これからは自分で切り開いていく力がもっともっと必要となります。
私は高校教師ですが、我々大人が思っている以上に、子どもたちはきっかけさえ与えてあげれば、どんどん自分たちでやっていきます。だからこそ、きっかけや刺激になる海外留学の機会を出来るだけ多くの子どもたちに与えてあげたいんです。
― 10代にして海外で異文化交流をするというのは、本当にいい経験になりそうです。
卯之原:コロナ禍で一気にICTが普及し、学校によってはオンラインで海外の方とコミュニケーションする取組も行われています。もちろんそれはそれで良さもあるのですが、画面越しではわからないこともあります。
その国にはどんな景色が広がっていて、どんな人たちが住んでいるのか…、現地に行くからこそ感じられることがたくさんあるんですよね。
過去の参加者からも、アウェイな環境に身を置いたからこそ、語学力の重要性を体感したとか、将来の夢に向けての目標ができたといった声も聞きます。最後のお別れのときに現地の方と抱き合い、短い期間ながらも熱い友情が育まれた様子を見かけたこともありました。
コロナ禍での中止を乗り越え、世界へ羽ばたく長野県の高校生
― それでは支援制度について具体的にお話を伺っていきたいと思います。信州つばさプロジェクトに参加する生徒の留学先について教えてください。
卯之原:信州つばさプロジェクトでは、2つのプログラムを用意しています。
1つは高校生の海外留学の第一歩を支援する「県企画プログラム」。もう1つは個人がそれぞれ目的を持って自分たちで行き先や研修内容をプランニングする「個人留学支援プログラム」です。
県企画プログラムでは、
・SDGs探究コース1(台湾)
・SDGs探究コース2(カンボジア)
・グローバルインターンシップコース(マレーシア)
・STEAMコース(アメリカ)
・芸術コース(ウィーン)
の5つのコースを用意しており、アメリカとウィーンは隔年で訪問しています。期間は国によって異なりますが、おおむね1週間程度の滞在ですね。
それぞれの国で体験する内容が異なり、例えばカンボジアコースでは現地の高校生と一緒にSDGsに関係するテーマでフィールドワークを行い、最後にプレゼンテーションをしてもらいます。
マレーシアコースでは、現地の日系企業、特に長野県にゆかりのある企業でインターンシップをさせていただき、商品開発や流通など、社会や職業について学びます。
一方、個人留学支援プログラムは、生徒自身が期間や場所を考え、手配も行ったうえで申請書類を提出します。過去の参加者の目的や行き先、期間は様々で、探究学習のテーマを海外でさらに調べてみたい、海外でボランティアをしてみたい、カナダの高校に1年間留学したい…など、本当に多様でした。
― 費用面ではどのような支援を行っているのですか。
井出:県企画プログラムでは、旅行費用の半額を教育委員会で支援して、半額は生徒の自己負担になります。(※奨学給付金受給世帯等の高校生に対しては費用の全額を支援)
個人留学支援プログラムはエリアと滞在の期間によって支援の金額が変わってきます。
― これまでにどのくらいの生徒さんが参加したのですか?
卯之原:初年度の2018年度は台湾に22名参加しました。2019年度は74名の参加を予定していましたが、コロナ禍の影響でタイミング的に行けたのは半分でした。
また2020年度、2021年度は感染拡大により派遣は叶いませんでした。
昨年の2022年度は、状況が少し落ち着いてきたということもあり、県企画プログラムではカンボジアとマレーシアのコースがそれぞれ15名、個人留学支援プログラムでは8名の計38名が参加しました。
応援者の存在が、挑戦の後押しをしてくれる
― 信州つばさプロジェクトは企業版ふるさと納税やクラウドファンディングを活用し、長野県教育委員会として民間からの寄附を受け付けていますが、それにはどのような理由があるのでしょうか?
卯之原:はい、2019年には個人のふるさと納税の制度を活用したクラウドファンディング型ふるさと信州寄附金にて「長野県の高校生に、ウィーンで音楽を学ぶ短期留学プログラムを提供したい!」という内容で寄附を募ったところ、子どもたちを支援したいと多くの方がお心を寄せてくださいました。
海外留学に行くということは、楽しいことばかりではなく、困難や不安を抱えることもあるでしょう。そんなときに自分がここに来られているのは保護者だけでなく、たくさんの人の支えのおかげなのだと感じて乗り越えるという経験をしてもらえたらと思い、民間のみなさまからの応援をお願いしています。
― すでに企業版ふるさと納税でも、本事業に寄附された企業さまもいらっしゃると聞きました。どのような理由で寄附されたのでしょうか。
井出:企業さまからは「高校生のうちに海外に行き、グローバルな視点を広げる機会が増えたら」と、事業の趣旨に賛同したからというお声をいただきました。
高校生の夢を叶えるために応援してくれる企業がいらっしゃることは本当に心強いです。我々もお礼状や報告集をお送りするほか、事前学習会でみなさまの支援によって行われている事業であることを話すなどして、高校生にみなさまのお気持ちを伝えていきます。
また、寄附金はすべて高校生への留学費用の支援に活用させていただきますが、特に個人留学支援プログラムはご寄付の状況に応じて支援できる枠を増やすことができるので、みなさまからの応援が本当に支えです。
―最後に一言お願いいたします。
卯之原:高校生にとってみれば、やはり海外に行くのはとても大きな勇気が必要なことです。企業のみなさまからの後押しをいただくことで、ひとりでも多くの高校生に新たな一歩を踏み出す機会を提供できたらと考えています。
私たちもどうすれば高校生にとってより良いものになるかを考えながら、鋭意ブラッシュアップしていきます!
井出:実は私、個人的な思い出として中学生のときに留学プログラムへの参加を希望していたのですが、枠が限られていたため行けずに悔しい思いをしたことを今でも記憶しています。高校生でこうしたプログラムに参加できていたら、人生において相当大きな経験になっていただろうなと思いつつ、本事業に携わっています。
県としては、子どもたちが経済面で留学の機会を諦めることがなく、希望をもって活躍できるよう、この事業を継続していくことが大事だと思っています。
島国の中の山国である長野県は、なかなか気軽に海外に行くのは難しい環境です。将来を担う高校生をぜひ応援していただき、少しでも心を寄せていただけると嬉しいです。
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私たちと「企業版ふるさと納税」を契機としてパートナーシップを構築し、一緒に地方創生に取り組んでいきませんか?もしご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ企画振興部総合政策課までお気軽にご相談ください。
長野県「企業版ふるさと納税」
WEBページhttps://www.pref.nagano.lg.jp/kikaku/kensei/shisaku/kigyobanfurusatonouzei/soudanmadoguchi.html
(参考)クラウドファンディング募集ページ
https://www.gachi-naga.jp/projects/3425/
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