#5 新しい健康食習慣、効果の決め手はコミュニケーション
最短ルートは心安らかに
新しい健康食習慣をスタートしたときに直面しやすい《壁》について取り上げてきたこの連載は、今回が最終回です。
連載全体のタイトルを《平和な健康習慣》と決めたのには大きな理由があります。それは、どんなにすばらしい健康食習慣を始めても、身近な人たちとの関係が良好で心安らかでなければ、その効果を得られなかったり、長続きしなかったりする事例をたくさん見聞してきたから。そしてまた、私自身も苦い経験をしたことがあるからです。
もちろん、心身の調子がすぐれないときに、心が安らかである人はあまりいないと思います。それでも《叶えたいゴールへの最短ルート》を進むには、身近にいる親しい人たちとの関係が良好であるようにと毎日意識し行動することが欠かせません。
フライングにご注意
たとえば、生活をともにする家族がいる中で、新しい食習慣を始めたいと思ったとき。一人でどんどん先走ってスタートしてしまうと、一番大切で身近にいる人たちとの関係が悪くなってしまうことがあります。
一刻も早く始めたいあなたが食材やキッチンツールを注文して次々と宅急便で届くたびに、何も知らされていない家族はあなたの変化を心配し、不安をどんどんふくらませているかもしれません。それがきっかけで、家族はあなたの新しい試みを応援してくれなくなるかもしれません。
情報の同期
前の連載でご紹介したゲルソン療法という食事療法の始めかたについて、クライアントさんから相談を受けたとき、私はまず、一緒に生活している家族とこの療法について話したかを尋ねてみます。家族間で情報共有ができていなかった場合は、自身の今の気持ちを家族に伝える機会を作ってもらいます。なぜなら、食事療法の効果を出すには、このプロセスを省略することができないからです。
「わんわん泣きながら『心配だったけどどうして良いか分からず不安でいっぱいだった』と打ち明けられた。まさか、相手がそんな気持ちだったとは知らなかった」。
「『その食事法に心から賛成はできないけれど、あなたがやりたいことなら応援したい気持ちもあるので複雑だ』と言われた」など、情報共有をした時の相手の反応はさまざまです。
ゲルソンクリニックに届いた大量の野菜
《言わなくてもわかって欲しい》はNG
多くのかたに共通するのは、「いつも一緒にいる家族だから自分の気持ちをわかってくれていると思っていたけれど、実際は違っていた」ということです。
どんなに長い付き合いがある間柄でも、言葉で伝えなければ真相はわからないものです。どの瞬間も私たちは新しい細胞を作りながら変化し生きています。本当はお互いに昨日とは何もかもが違っています。だからこそ、昨日より今日はより良い健康状態の自分でいたいと考えて私たちは新しい健康食習慣に取り組みます。
自分が変わるなら、相手も変わります。「今日はこんな風に考えているところ」とか、「今日のあなたはどんな感じ?」と、マメに情報共有し合うことで、いちばん近くにいる大切な人たちと平和な人間関係を創造することができます。お互いに真相がわかれば、感情的なわだかまりを持たずに前へ進めます。
溜め込んだ感情の末路
《感情的なわだかまりを溜めたままでいると自律神経のバランスが崩れ、治癒に必要なエネルギーが失われる》という事実があります。これは、自律神経のうち交感神経がいつもONになっていて、緊張が解けないままでいると発生します。
その理由は、ストレス対処ホルモンと言われるアドレナリンを使いすぎるからで、そのうちアドレナリンを出す副腎が疲弊してしまいます。副腎疲労症候群です。その後は、全てつながっているあらゆる種類のホルモン系組織で負の連鎖反応が続きます。
副腎から→甲状腺へ
まず、甲状腺が正しく機能しなくなります。甲状腺で作られるさまざまなホルモンは、全身の細胞中にあるエネルギー工場「ミトコンドリア」の数や機能をコントロールしています。ですから、全身の細胞のエネルギーに支障が出てきます。よくある症状としては、不眠やうつが知られます。
前回の連載(第4回「健康食と治療食」)でも、《体のエネルギー工場「ミトコンドリア」のシステム障害を復旧することが自然治癒には大切である》と書きました。負の感情を溜め込むことは、まさに《治癒力》を作っているミトコンドリアに壊滅的なダメージを与えることになるのです。
ぜひ、自身のなかの平和、そして身近な人たちとの平和な人間関係を意識しながら、あなたの新しい健康食習慣を効果的なものにしてください。成功することを心から願っています。
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■参考書籍
『Dr.マックス・ゲルソンのゲルソン療法 細胞から回復する高カリウム低ナトリウム療法 セオリー編』、氏家京子著、2019年発行
『Healing is Voltage Cancer's On/Off Switches: Polarity』、Jerry Tennant, M.D.著
・ゲルソン療法に関する日本語HP
・ゲルソン・クリニックのHP
このコラムを書いた人
氏家京子(うじいえ・きょうこ)
1972年生まれ。
健康雑誌の編集部に6年勤務。米国系統合医療サービス企業に1年勤務。 フリーランスジャーナリストとして独立後、統合医療や自然療法分野の取材を国内外で継続し、医療消費者への教育活動、統合医療に関する翻訳書籍の出版を行う。
1998年から始めたゲルソン療法の取材経験は日本でもっとも豊富で、米国ゲルソン・インスティテュートから日本アンバサダーに任命される。
ゲルソン療法のワークショップを開催するほか、ゲルソン・クリニックへの入院希望者に通訳として同行する業務も行う。
ゲルソン療法の患者教育を担うゲルソン・エデュケーター育成、ゲルソン療法専門医の育成にも携わる。
2019年6月、『Dr.マックス・ゲルソンのゲルソン療法 細胞から回復する高カリウム低ナトリウム療法 セオリー編』を出版。
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