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#4 コーヒーとスイーツの誘惑

無性に食べたくなる衝動の理由

 新しい健康食習慣が【無理なく自然に続く】には、「無性に食べたくなる衝動が発生しないように全体がデザインされている」のが大切です。
 【無性に食べたくなる渇望感】に襲われるのは血糖値が不安定になるから。つまり、1日を通して血糖を安定化するトータルプランが必要です。そうでなければ、あっという間に以前の食事に逆戻りしてしまいます。
 また、血糖値が不安定になると、身体は自分自身の肉体を分解して栄養にします。この【分解モード】になっている限り、身体は健康な組織を作る【再生モード】にならず、デトックスも治癒も始まりません。

ジュースとローフードの落とし穴

 【分解モード】で最初に影響を受けるのはターンオーバーの早い組織で、免疫細胞、小腸の内壁細胞、毛包細胞です。それにともなって発生する症状は、感染しやすくなる、消化不良、食物アレルギー、消化管の炎症、脱毛などが考えられます。これが長期化すれば骨にも影響が及び、骨粗鬆症を招きます。【再生モード】にならないということは、あらゆる組織が早期に老化するということなのです。
 「朝食は果物とジュースだけにする」など、新しい健康食習慣を続けているのに元気が無くなり、不健康になったと感じる人たちの中にも、同じことが起こっているケースがあります。

7つの質問

あなたの血糖状態を知るために、7つの質問に答えてみましょう。

1. コーヒー、コーラ、アルコール飲料、タバコ、菓子パン、ケーキ、クッキー、チョコレートが無性に欲しくなることがある。
2. その渇望感は、午後4時前後に強くなる。
3. その渇望感は、生理前に発生する。
4. 朝食を食べないが、コーヒーはよく飲む。
5. お腹が空くと気分が不安定になり、イライラし、頭痛が発生する。
6. ときどき動悸、発汗、震え、パニック発作が起こる。
7. 突然、疲労感やエネルギー切れの感覚に襲われる。

 もし、一つでも「はい」と答えたなら、血糖コントロールに失敗している可能性があります。

血糖不安の原因

 血糖不安は、不適切な食習慣が長く続くと発生します。たとえば、精製糖質(砂糖、チョコレート、菓子パン、クッキーなど)やカフェイン飲料の常食、無理なダイエットや絶食、誤った糖質制限です。
 糖質食品は大きく2つのグループに分けることができます。ここで問題になっている【精製糖質】と、それとは異なる【複合糖質】です。わかりやすいように、精製糖質を板チョコ1枚、複合糖質を玄米ご飯1膳に置き換えてみましょう。どちらも約270キロカロリーです。

同じカロリーの糖質でも結果は違う

 カロリーは同じですが、じつはチョコレートを食べた時の方がお腹は空きやすくなります。これは精製糖質が急激に血糖を上げるせいでインシュリン反応が激しく起こり、血糖が脂肪に変化してしまうからです。食べたはずのエネルギー源は使われないので、お腹が空いて脂肪の蓄積が増えます。
 一方、未精製穀物などの複合糖質は血糖を緩やかに上昇させるので、インシュリン反応もおだやかです。食べたエネルギー源は安定した血糖として長く供給され続けるので空腹を感じるのは約4時間後、次の食事の頃になります。

コーヒーの誘惑

 では、糖質を含まないカフェイン飲料はなぜ血糖不安に関係するのでしょうか?
 コーヒーなどに含まれるカフェインはアドレナリンを刺激する特性があります。それが肝臓に保存されている糖の別形態であるグリコーゲンを目覚めさせ、グリコーゲンは血液中で糖になります。糖質を食べなくても簡単に血糖が上がって元気になるので、とても便利で止められなくなります。でも、このアドレナリン刺激をむやみに使い過ぎると、グリコーゲンが枯渇して【燃え尽き感】に襲われるようになります。

健康食習慣もサステナブルなものを

 血糖を安定的に維持する【サステナブル】(持続可能)な健康食習慣を獲得するには、まず、カフェインやアルコールなどの刺激を避けて、複合糖質を積極的に食べるようにしましょう。これで、血糖値が安定化しやすくなります。
 そのうえで、次のことに気をつけましょう。

□ 血糖コントロールに失敗しているなら朝食を含めて食事は抜かない。
□ 未精製の複合糖質をよく食べる。
□ 複合糖質食品と、少量の脂肪とタンパク質食品を一緒に食べる。
□ 未精製の穀物や豆科野菜など、食物繊維を意識して食べる。
□ カフェイン飲料、チョコレート、アルコールの摂取を控える。

 こうしたことに気を付けていると、無性に食べたくなる渇望感や衝動が弱くなってきます。コーヒーやスイーツの誘惑には、我慢をするのではなく、欲しくならない生理状況に身体を整えてあげれば良いのです。


■参考書籍
『Dr.マックス・ゲルソンのゲルソン療法 細胞から回復する高カリウム低ナトリウム療法 セオリー編』、氏家京子著、2019年発行

ゲルソン療法に関する日本語HP
ゲルソン・クリニックのHP

このコラムを書いた人
氏家京子(うじいえ・きょうこ)

1972年生まれ。
健康雑誌の編集部に6年勤務。米国系統合医療サービス企業に1年勤務。 フリーランスジャーナリストとして独立後、統合医療や自然療法分野の取材を国内外で継続し、医療消費者への教育活動、統合医療に関する翻訳書籍の出版を行う。
1998年から始めたゲルソン療法の取材経験は日本でもっとも豊富で、米国ゲルソン・インスティテュートから日本アンバサダーに任命される。
ゲルソン療法のワークショップを開催するほか、ゲルソン・クリニックへの入院希望者に通訳として同行する業務も行う。
ゲルソン療法の患者教育を担うゲルソン・エデュケーター育成、ゲルソン療法専門医の育成にも携わる。
2019年6月、『Dr.マックス・ゲルソンのゲルソン療法 細胞から回復する高カリウム低ナトリウム療法 セオリー編』を出版。



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